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「頼み方の極意⑥ー長期的なサポートを得るための3つのポイント」

更新日:2022年3月7日




 いつもお世話になっております。孫平です。


 さて、今回で頼み方シリーズは完結になります。



 これまで見てきた頼み方ですが、そのときは上手く頼めても、それが一回きりの関係で終わってしまうのは非常にもったいないことです。




 そこで最終章となる今回は、長期的に相手から頼み事を聞いてもらうための3つのポイントについてお話ししたいと思います。





 それではさっそく参りましょう。








①仲間意識


 ポイントの1つ目は、仲間意識の感覚を用いることです。


 これは心理学で「内集団」と呼ばれるもので、簡単に言うと、「私たちは、家族や友人、会社の同僚など、自分にとって重要な集団に属している人たちを、そうでない人たちよりも贔屓しやすい」というものです。



 なぜそのような心理が働くかというと、遥か昔私たちの祖先の時代でも、ヒトは小さな群れをつくることで生き延びており、群れの仲間を助けることは、他でもなく自分自身の生存率を高めることに直結していたからです。



 つまり内集団は、遥か昔から私たちの遺伝子に受け継がれてきた、生きるための本能なのです。






 内集団が働くため、家族や友人の頼み事なら、みなさんもそんなに躊躇することなく受け入れられると思います。



 では、そんなに親しくない人、つまり外側の集団にいる人たちに頼み事を聞いてもらうためにはどうすればいいのでしょうか?


 そこでポイントになるのが「仲間意識の感覚を用いる」ことです。







「一緒に」という言葉を使う


 スタンフォード大学のプリヤンカー・カーとグレッグ・ワルトンによる研究では、「心理的に一緒」という感覚をもっている人は、内発的動機付けが発動しやすいということが分かりました。


 つまり相手が内発的動機付けによりあなたを助けた場合は、その関係は一度きりではなく長期的に続く可能性があります。



 そのため、特別親しくない間柄の人に頼み事をする際は、「一緒に〇〇を手伝ってくれませんか?」とか「〇〇をやって、一緒に〇〇を実現させませんか?」というように、心理的に一緒である=内集団の感覚を抱かせることが非常に有効になります。






共通の目標を意識させる


 共通の目標であれば、それを達成したときに両者にメリットがあることになります。


 助ける側からすれば、人を助けて尚且つ自分の目標も達成できるということは、とてもおいしい話でしょう。



 「私たちが取り組んでいるこのプロジェクトを実現させるために、是非協力してほしい。」というように、親しくない間柄でも、共通の目標があればそれを意識させ、自分自身にもメリットがあると気付かせれば、内発的動機付けによる助けを得やすくなります。






共通の敵を意識させる


 上の2つよりも難易度は高いですが、共通の敵を倒すために協力することほど、人を結びつけるものはありません。


 「〇〇社からシェアを奪うための戦略を一緒に考えてほしい。」というように、人でも会社でも、共通のライバルがいるのであれば、それを意識させることは非常に有効です。





 これらは全て、「あなたと私は同じ仲間ですよ」ということを伝えることであり、相手から「仲間なのだから助けてあげたい!」という気持ちを引き出すことに他なりません。








②自尊心を刺激する


 ポイントの2つ目は、相手の自尊心を刺激する頼み方をすることです。


 私もみなさんもそうであるように、人は基本的に自分のことを善い人間だと思いたがっています。



 だからこそ、頼み事をする際に、相手の自尊心を高めるような伝え方をすることで、内発的動機付けによる行動を促しやすくなるのです。




 自尊心は、「誰でもできること」では高まりません。


 「自分にしかできないこと」をしたときに高まるのです。




 つまり頼み事をするときは、「これはあなたにしかできないことです。だからこそ是非あなたに助けてほしいのです。」ということを伝えるべきなのです。




 しかし、そのような頼み方をするためには、少々遠回りですが、「相手の得意なことや大切にしている価値観など、相手のアイデンティティをよく理解すること」が重要になります。




 相手のことをよく理解した上で、その人の自尊心を刺激する頼み方ができれば、断られる可能性はほぼないでしょう。



 自分自身に置き換えてみると実感できると思いますが、自分の得意なことや好きなことで困っている人の助けになれることほど、生きている幸せを感じられることはないのです。









③有効性を感じさせる


 3つ目のポイントは、有効性です。


 有効性について、心理学者のE・トーリー・ビギンズはこう主張しています。


 

 有効性を感じたいという欲求とは、自分の行動に効果があり、結果に影響を与え、求めていた結果を達成したことを把握したいという欲求のことである。


 そしてそれこそが、人間を積極的に行動に向かわせ、人生を有意義なものにするものなのである。

 


 逆に、有効性が感じられない状態が続くと、短期的にはやる気が低下し、長期に渡ると疾患レベルの無力感やうつ病につながることが、研究により明らかになっています。





 この有効性を実感したいという欲求は、人間のあらゆる行動に影響するものであり、当然ながら、人を助けるという行為にも当てはまります。



 つまり、自分が助けたことで相手にどんな効果があったのかを知りたい、ということです。




 相手に助ける意欲をもたせ、助けることによるメリットを享受させ、そのサポートを継続させるには、そのような有効性を感じてもらうことが必要不可欠になります。




相手に有効性を感じてもらうために、頼み事をする側である私たちが意識するべきポイントは以下になります。





●自分が求めている助けがどのような内容で、その助けがあるとどのような結果が得られるかを、相手に事前に明確に伝える。




●助けてもらう方法は、相手に任せる。




●相手に助けてもらったことで、どんな効果があったのかを伝える。




●相手に感謝を伝える。できれば、自分がどれだけ助かったかということではなく、相手の行動や気持ちに対して感謝する。








 以上、相手から内発的動機付けによる助けを引き出し、継続的に助けを得るためのポイントについてお話ししてきました。



 これまでの頼み方の極意シリーズで紹介してきた方法や、今回の3つのポイントをご理解いただければ、誰かに助けを求めることは、実は相手を最高に幸せにすることでもあるということに気付くと思います。




 頼み事は、私たちが思っているほど難しいことではありません。



 人は、私たちが思っているよりも遥かに、誰かの助けになりたいと思っているのですから。







【参考文献】

ハイディ・グラント・ハルバーソン『人に頼む技術』2019年(徳間書店)





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