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「美人は性格が良いのか悪いのか問題」

更新日:2022年4月13日




 いつもお世話になっております。孫平です。



 今回は、美人やイケメンは性格が良いのか、それとも悪いのか、という点についてお話ししたいと思います。



 巷では、「美人=性格が悪い」というステレオタイプはよく聞くものですし、「美人=性格が良い」というのも何となく分かる気がします。(これはおそらく先日紹介した、「ハロー効果」による影響でしょう。)



 様々な研究者が、この問題についての実験を行っています。


 まずは、「美人=性格が良い」という主張からみていきましょう。








「美人は性格が良い」論


 まずは、ミルズとアロンソンが1965年に行った実験を紹介しましょう。



 

 実験は、一人の女性の印象を実験参加者に尋ねるものでした。

 半分の参加者には、その女性がメイクアップした状態で見せ、残りの半分の参加者には、逆にメイクダウンした状態で見せました。


 実験の結果、メイクアップして魅力的になった方が、魅力的でない状態に比べて、「優しそう」「好感がもてる」「陽気」「落ち着いている」「チャーミング」「ファッショナブル」「きちんとしている」「ロマンティック」であると認知されることが分かりました。

 

 


 これらはすべて性格に関わる項目なので、外見的魅力が高い方が、性格も良いと認知されやすいということになります。





 また、池上が1989年に行った実験で、第一印象の効果が明らかになりました。


 第一印象が「良い」場合、その後で「悪い」印象を与えたとしても、好感度は高いままでした。


 逆に、第一印象が「悪い」場合、その後で「良い」印象を与えたとしても、好感度は低いままだったのです。



 つまり、良くも悪くも第一印象の効果は持続し、しかもそれはなかなか覆らないということが分かったのです。


 


 ここでは、人間がもつ「一貫性の法則」がはたらいているとも考えられます。



 もしAという人に好感をもったとしたら、Aが何か悪いことをしたとしても、「Aは良い人だから、何か特別な事情があったのだろう」とか「たまたまだろう」というふうに、最初にとった自分の立場や考えを変えることなく、事実を都合よく解釈している可能性があるのです。



 逆の場合も然りです。もし最初に悪い印象をもった人が何か良いことをしたとしても、「あいつは何か企んでいるんじゃないか」とか「自分が得するために全部計算でやってるに違いない」というふうに思ってしまうのです。




 いずれにせよ、外見的魅力や第一印象が良いと性格も良いと思われやすく、好感も長くもたれやすいというこれらの実験結果から考えると、美人やイケメンは確実に得をしていると言えるでしょう。



 





「美人は性格が悪い」論


 しかし、美人は性格が悪い、というのも定番の話だと思います。



 井上章一はその点について、明治時代の「修身」(道徳のような教科書)に書かれている文章を引用しています。


 

「美人は往往、気驕り心緩みて、却つて、人間高尚の徳を失ふに至るものなきにあらず…之れに反して、醜女には、従順・謙虚・勤勉等、種類の才徳生じ易き傾きあり」

 


 つまり美人はその美貌ゆえに努力を怠り傲慢になりやすいが、不美人は見た目で勝負できないために様々な能力を身につけ、その一つとして性格も良くなる、というのです。



 美人やイケメンは、外見的魅力が低い人たちの嫉妬の対象になるのは、昔も今も変わらないでしょう。



 実際に美人やイケメンの性格が悪いわけではなく、彼らのような容姿をもてなかった圧倒的多数の人たちの嫉妬心や陰口が、「美人=性格が悪い」というネガティブなステレオタイプをつくってきたとも考えられます。





 また、いくつかの研究では、美人ゆえに悪い印象を与えてしまうケースがあることが分かっています。



 例えば、美人が悪事を働いた場合は、普通の人が同じような悪事を働いた場合よりも大きな非難を浴びやすい(シガールとオストローブ、1975年)や、美人が男性的な仕事に就こうとする場合は、面接で不利になりやすい(ジョンソン、2010年)などです。








結局のところ、美人は性格が良いのか悪いのか


 心理学の世界では昔から、外見的魅力と性格についての研究が散発的に行われてきました。




 イエール大学のファインゴールドは、これらの問題を扱った145本の論文を集めて分析しました。(1992年)



 その結果、外見的魅力が高い人は低い人に比べて、「孤独感が少ない」「社会的不安が少ない」「人気がある」「社会的スキルが高い」ことが分かりました。



 これらの項目も性格に関わるものなので、やはり「美人の方が性格が良い」といえそうです。



 しかもこれは、145本もの論文の分析から導き出された結果なので、非常に信頼性の高い結果だといえるでしょう。




 このようになる原因の一つとして、先日紹介した「ピグマリオン効果」の影響も考えられます。


 つまり、美人な子は良い子だと期待されるので、実際にそのように育つ、という可能性もあるのです。





 「美人やイケメンがモテる」というのは誤った固定観念だと思いたいところですが、ここまでの研究をみてみると、「美人やイケメンは本当に優れた性質をもっているからモテる」可能性が高いと言わざるを得ないでしょう。




 綺麗事を抜きにして科学的に考えれば、プライベートでも仕事でも誰かと付き合うのであれば、外見的魅力が優れた人たちを選ぶべきで、また自分自身も選ばれる努力をしなければいけない感じですね。




 しかしここまで露骨な結果だと、いや〜なかなか厳しいものですね…。







【参考文献】

越智啓太『美人の正体』(2013年)実務教育出版



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