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「容姿に関する我々の共通認識」

更新日:2022年4月11日




 いつも大変お世話になっております。孫平です。


 皆さんは今までの人生の中で、誰かのことを「綺麗」とか「可愛い」とか「カッコいい」と思った経験はもちろんあるでしょう。


 

 ただ、どんな容姿の人をいわゆる「美形」だと認識するかは、当然個人差があります。


 友人が、「あの人超カッコいい!」と言っていても、自分は「別にそうでもないじゃん…」と感じることはよくある話ですよね。



 しかしそうした差は誤差の範囲で、実際には私たちがどんな容姿の人を「美形」だと認識するかは、概ね共通しているということが分かっています。



 今回は、そのあたりについてみていきたいと思います。


 それでは参りましょう。








美形は誰が見ても美形なのか?


 まずは、人の美しさの評価がどれだけ一貫しているかを調べた研究を紹介しましょう。



 

 アメリカの大規模な一流大学の学生たち約2,500人を対象に、1969年から1984年にかけて行われた研究で、学生たちの写真(肩から上が写っている)をそれぞれ4人のランダムな人たちに、5点(素晴らしく良い)〜1点(とても醜悪)の尺度で評価してもらった。


 

 ここから分かったことは以下の点である。


 

 4人の評価者全員が、同じ評価を与えたケースは全体の14%であった。


 しかし、与えた評価が「全員同じ」「4人中3人が同じ」「4人中2人が同じで、且つ評価の違いが1点だけだった」ケース、つまり「評価がだいたい同じ」だったケースは、女子学生だと67%、男子学生では75%にのぼった。


 そして、4人の評価者がまったくバラバラの評価をつけたのは、写真全体のうち、たったの0.1%だけだった。


 


 つまりこの研究からは、私たち人間がどんな容姿の人を美しいと感じ、また醜悪と感じるかは、概ね一致しているということが分かります。








整形の効果は小さい?


 「美形」が、恋愛や仕事、人間関係や収入など、人生のあらゆる場面で有利に働くことは、多くの研究から明らかになっています。


 そんな科学的根拠を知ってか知らずか、美容整形にいそしむ人たちは大勢います。


 

 では、美容整形がコストに見合った効果がないことを知っていたら、その人たちの考えは変わるでしょうか。




 

 韓国の整形手術を研究して得られた結果からは、ほとんどの人にとって手術で容姿を改善しても、得られる経済的な利益は手術にかかるコストには程遠く、ましてや手術を受けることによる精神的負担、つまり「苦しみや痛み」には全く見合わない。

 

とのことです。

 





 では、整形手術よりもお金のかからない、化粧品や服、ヘアケアやエステなどの効果はどうでしょうか。



 

 上海で行われた調査では、美容に全くお金を使わない女性が、平均的な額を美容に使っても、容姿の評価は3.31点から3.36点にしか上がらなかった。


 平均的な額を美容に使っている女性が、平均の5倍までお金をかけると、容姿の評価は3.56点に上がるが、その効果は美容にかけたコストを上回るどころか、お金をかければかけるほど効果が小さくなっていくことが分かった。

 


 私たちは普通、服装や髪型や化粧などにお金をつぎこめば、経済的にも払ったお金以上のものが得られると信じています。


 しかし、中国での調査によると、「容姿を良くするために1ドル使って得られるお金は、平均でたったの4セント」だそうです。



 

 

 ここまでの話は、あくまでも経済学的にみた内容であって、容姿を良くすることに全く意味がないということではありません。


 経済学的には、美容にかけたお金を回収することは難しいことが分かりましたが、別に払ったお金以上のものを回収できなくても、「自分の容姿が良くなることで、幸せな気持ちになれればそれでいい」という人にとっては気にすることではないでしょう。


 ただ、「容姿を良くすること=かけたお金以上の利益を得るための投資」みたいな考えを持っている人は、その考えを改めた方が賢明かもしれません。損をする可能性が大です。








容姿に関する共通認識


 最後に、様々な研究から分かった、私たちが人の容姿に対して(無意識に)もっている共通認識について、まとめていきます。




 

①だいたいの人は同じ容姿を美しい又は醜いと考える。美しいとか並より上の容姿だと思われる人は、だいたい誰にとってもそう評価される。一方、醜いと思われる人はだいたい誰にとっても醜いと評価される。



②だいたいの調査では、容姿が美しいと評価される人の方が、醜いと評価される人よりも多い。



③人は年寄りよりも、若い人により魅力を感じる傾向がある。



④若いときに相対的に美しいと評価された人は、歳をとっても相対的に美しいと評価される傾向がある。



⑤服装や化粧、整形手術で容姿を変えることはできるが、その効果はかけたコストに比べて小さい。



⑥女性と男性では容姿の評価のされ方が違う。男性に比べて女性は、「非常に美しい」とか「非常に醜い」と評価される割合が多い。つまり、女性の容姿は評価が割れることが多い。

 



 以上のような内容を知ったからといって、私たちの人生が何か豊かになることは、おそらくないでしょう。


 しかし、容姿に関する話はタブーが多いため、だからこそ私たちは興味をそそられます。



 こうした厳しい現実と向き合うことも、たまには必要なのかもしれません。






【参考文献】

ダニエル・S・ハマーメッシュ『美貌格差』2015年(東洋経済新報社)




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