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「眠れなくなるほど面白い乳房の科学」

更新日:2022年4月13日




 いつもお世話になっております。孫平です。



 今回は、日常生活に役立つかどうかはかなり微妙ですが、知的好奇心をくすぐる話として、乳房の科学について見ていきたいと思います。



 興味のある方は是非お付き合い下さい。


 

 まず最初にご理解いただきたいのは、こうした「性」に関する話はかなりデリケートなものですが、大前提として私たち生物は、常に「生存」と「生殖」を最優先に生きているということです。



 全ての人がそういう信条をもって生きているわけではありませんが、他の生物と同様に私たちヒトも「子孫を残す」ことを至上命題として生きている、ということを前提に話を進めていきます。



 


 ヒトは、思春期で乳房が大きくなり、生涯を通してずっと大きいままでいる唯一の種です。


 サルや他の霊長類の乳房は、メスが授乳する期間しか大きくならず、そのときもさほど大きくふくらむことはありません。



 そしてヒトの乳房の機能には、授乳という育児機能に加えて、他の動物にはない機能があります。


 それは、より健康で、より妊娠確率が高いことをオスに示す性的機能です。








性的シグナルとしての乳輪


 後ほどお話ししますが、乳房自体の大きさというのは、女性が妊娠しやすいかどうかを知らせる重要なサインとなっています。


 そして、その乳房をより大きく見せるために役立つのが「乳輪」なのです。



 つまり、乳輪が大きいと乳房も大きく見えるため、結果として(妊娠しやすいという点で)性的魅力が増し、男性の気を惹きやすいのです。




 通常乳輪は、授乳期間中はふだんよりも濃い色になり、大きさも大きくなります。


 これは一説には、生後間もない視力の低い赤ちゃんが、母乳が出てくるところを見つけやすくするためだと言われています。



 つまり、乳輪が濃くて大きいということは、現在赤ちゃんがいたり、過去に出産経験があることを示すため、男性から見たときに生殖能力が高いことのサインになるのです。




 現代では見ず知らずの人に裸を見せ合うなんてことはまずないのですが、人類の歴史においては、衣服を身につけることがなく、男女が互いに複数の相手と性交する「ポリガミー」が標準だった時代があり、そうした社会に生きていた女性たちは、より濃くより大きい乳輪を高い生殖能力のサインとして見せびらかし、男性の気を惹こうとしていた可能性が十分考えられるのです。








なぜヒトの乳房は大きくて丸いのか?


 ヒトの乳房には他の霊長類にはない脂肪組織があるため、大きく丸いかたちになります。


 では、なぜヒトの乳房にだけ、これほど多くの脂肪がついているのでしょうか?




 それについては様々な説があります。


 

①脂肪が乳腺を保護し、母乳を温かく保つため。



②他の霊長類の赤ちゃんは授乳のときに毛皮をつかむが、体毛のないヒトの赤ちゃんは乳房をつかまなければいけないため。



③大きく丸い乳房は、女性が男性に、自分の生殖能力と、母親になるための生物的資源やそれを蓄えていることを誇示するため。



④大きく丸い乳房は、性的魅力になるため。(女性の乳房や乳首は、性的に興奮すると25%も大きくなる。)



⑤大半の霊長類は後背位で性交し、あざやかな赤い尻が性的なシグナルとなる。一方ヒトは、正常位での性交が可能になってから、2つの丸い尻の代わりとして2つの丸い乳房を、性的なシグナルとして発達させたため。



⑥妊娠と授乳時のエネルギー源として、脂肪を乳房に蓄えるため。


 

 どれももっともな理由に思われますが、個人的には⑤の説が非常に面白いなぁと思います。








バスト・ウエスト・ヒップと妊娠の関係


 ハーバード大学のピーター・エリソンとスーザン・リプトン、そしてポーランドのチームが2004年に行った研究では、



 

大きなバストと、細いウエストと、大きなヒップを持つ女性は、そうでない女性に比べて、常にエストラジオール(妊娠のしやすさと関係のある卵胞ホルモンの一種)のレベルが高く、特に最も妊娠しやすい月経と月経の間の中間期においては、30%も高い

 

という結果を発表しました。




 つまり、俗に言う「ボン・キュッ・ボン」や「グラマラス」な体型の女性の方がより妊娠しやすいということのようです。



 


 ちなみにこの、大きなバスト、細いウエスト、大きなヒップとはどれぐらいなのかというと、一番重要なのはウエスト対ヒップの比率のようなのです。



 ミシガン大学のボビー・ローの社会調査結果から、すべての文化に共通して、ウエスト対ヒップの比率は7:10〜8:10がもっとも魅力的に見られることが分かりました。


 



 別の面白い研究では、テキサス大学の研究者たちが、中国とインドの研究者たちと共同で、アメリカ・イギリス・中国・インドの紀元前から現在までの文学作品数千点を調べた結果、ロマンチックなシーンでは1つの例外もなく、ウエストの表現は「細い」であり、ヒップの表現は「大きい」「広い」だったそうです。


 バストに関しては多少バラつきはありますが、だいたいは「大きい」という表現が使われていたそうです。





 おそらく男性ははるか昔から無意識のうちに、ウエストが細くヒップが大きい女性、つまり妊娠しやすい(自分の子孫を残しやすい)女性を選んでいたのでしょう。









砂時計体形の母親から生まれた子どもは知能が高い


 ピッツバーグ大学のスティーヴン・ゴーリンと、カリフォルニア大学サンタバーバラ校のウィリアム・ラッセクの研究では、



 

ウエストとヒップの比率が7:10〜8:10で、かつヒップサイズが大きい母親から生まれた子どもは、知能テストでより高い得点を記録している

 

ということを明らかにしました。




 これには確かにそう言えるかもしれない理由がありまして、ヒップや太ももの脂肪には、脳に良いとされるオメガ3系脂肪酸が多く含まれており、それが胎児の脳の発達に非常に大きな影響を与えると考えられているのです。



 また、乳房の脂肪にもオメガ3系脂肪酸が多く含まれていることが分かっており、男性がボンキュッボンの女性に惹かれるのは、妊娠しやすさだけでなく、優秀な子孫を残すための良質なエネルギーを蓄えていると判断しているからかもしれないのです。








左右対称な乳房の方が好き


左右対称性は、美女やイケメンの必須要素ですね。


 左右対称であるということは、遺伝子のエラーが少ないということであり、病気にかかりにくいなど、より優秀な遺伝子をもっていることのサインになります。



 左右対称性は顔だけでなく、腕や脚など、体の全ての部位が対象になります。

 つまり乳房も対象になるのです。




 ある研究では、左右対称な乳房の女性の方が、非対称的な乳房の女性よりも妊娠する確率が顕著に高い、ということが明らかになっています。



 また、2006年にイギリスの学会誌『乳癌研究』に、左右の乳房の大きさがはっきり目立つほど違う女性は乳癌になるリスクが高い、という論文が掲載されました。




 これは男女共通ですが、私たちが左右対称な人に魅力を感じるのは、左右対称を形成する遺伝子がもつメリットを、本能で敏感に感じとっているからなのかもしれません。




 ちなみにだいたいの女性の乳房は、心臓のある左側の方が大きいと言われていますが、乳房の大きさと左右対称性が関係するのは妊娠のしやすさであって、乳房の大小や非対称性は母乳をつくる能力とは関係ないことも分かっています。





 ウエスト対ヒップの比率は、確かにそうだなぁと思うところはありますが、ことバストに関しては様々な研究結果が出ていますが、大きい小さいとか、左右対称非対称とか、乳輪が濃い薄いとか、最終的な好みは結局人それぞれでいいんじゃないでしょうか。







【参考文献】

シャロン・モレアム『人はなぜSEXをするのか?』2010年(アスペクト)



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