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「ビッグファイブ(5つの因子)中半」

更新日:2022年4月18日




 いつもお世話になっております。孫平です。今回は、ビッグファイブの5つの因子中半戦になります。(そんな言葉はありませんが)







 それではさっそく参りましょう。








③情緒安定性


 情緒安定性が高い人は、浮き沈みの少ない、安定した精神状態で日常生活を過ごすことができます。



 そしてこの情緒安定性は、他の因子の特性を増幅する役割も担っています。



 例えば、誠実性が高い人で情緒安定性も高ければ、その人の誠実性はさらに高まります。また、協調性が低い人で情緒安定性も低ければ、他者との間に対立関係を生み出しやすくなります。



 


 情緒安定性が低い人は、主観的な幸福度が低く、ネガティブな感情を抱きやすく、結婚や対人関係で問題が生じやすく、仕事の満足度が低く、健康状態があまりよくない傾向があることが分かっています。(ちなみにこれらの傾向は、精神疾患を患っている人たちではなく、健康で正常な日常生活を送っている人たちの話です。)




 なぜこのような状態になりやすいかというと、情緒安定性が低い人は、危険を察知する脳の器官である「扁桃体」が敏感であるためです。


 他の人よりも過敏なため、不安や抑うつ、自意識過剰、感情的な脆さといった問題を抱えやすくなります。

 

 別の見方をすれば、他の人なら見過ごしてしまうような小さな危険の兆候を察知し、それについて熟考する能力に優れているとも言えます。


 しかし、常に脳が警戒しているために、慢性的に強いストレスを感じており、免疫系の疾患に罹りやすくなります。また、睡眠障害になる確率や、病院を訪れる頻度も高いなど、健康上の問題を多く抱えやすいのが特徴です。





 ここまで見てきた情緒安定性が低いことによる問題を考えると、デメリットが多いように思えます。


 しかし、この情緒安定性を進化的な背景から考察してみると、情緒安定性の低い人たちの遺伝子が、淘汰されずに生き残ってきた理由が見えてきます。




 

 私たちの祖先が、30人程度の集団で狩猟採集生活を送っていた時代では、周囲には敵や危険が多かったため、集団内に危険に敏感な人がいることが大きな意味を持っていました。


 そのような人たちは、危険をいち早く察知して集団内に警告することができ、自らも危険から逃れやすい立場にあったと推測できます。



 逆に、危険察知能力の低い(つまり情緒安定性が高い)人たちは、普段は幸せに暮らしていても、何か危険な状況が近付いてきたときに、逃げ遅れて肉食動物の餌食になる可能性が高かったと考えられます。




 もちろん現代では、当時とは危険の性質が大きく異なっていますが、情緒安定性が低い人たちのような、危険に敏感に反応するという遺伝子を持つ人たちは多く存在しています。



 そして昔と同じように、集団内に危険を警告する役割を担っているのです。









④開放性


 開放性は、新しい考えや人間関係、環境をどの程度受け入れられるかを表すもので、クリエイティビティと深く結びついています。



 開放性が高い人は、芸術や文化に強い興味を示し、エキゾチックな味わいや匂いを好み、世界を複雑なものとして捉える特徴があります。



 一方開放性が低い人は、新しい何かにチャレンジすることに抵抗を感じ、いつも通りの行動を好み、エキゾチックな誘惑にも魅力を感じません。




 また、開放性が高い人は、情緒安定性が低い人と同じく、不安や抑うつ、敵意などのネガティブな感情を多く抱きます。

 

 しかし、情緒安定性が低い人とは異なり、喜びや驚きなどのポジティブな感情も多く抱きます。


 特に、美しいものに触れたときに鳥肌が立つことが多いのも、興味深い特徴です。





 この開放性は、遺伝的要因が高いことが分かっています。自分の開放性が高い場合、親や祖父母も開放性が高い可能性があり、自分の子どもや孫も開放性が高い可能性があります。



 音楽や芸術作品を鑑賞するときに、親や子どもも自分と同じようなところに感動していた、という経験もあるかもしれません。





 最後に開放性と幸福度との関連性についてですが、開放性はポジティブな感情とネガティブな感情のどちらにも結びついているため、他の因子とは性質が異なり、幸福度との関連性についてはかなり複雑だというのが現在言えることです。



 しかし、開放性の高さは、新しさが求められ評価される職業での成功とは、関連があることが分かっています。




 




 さて、次回はいよいよ最後の因子、外向性についてのお話です。



 ここまで見てきた4つの因子は、スコアが高い方が良いもの、または低すぎず高すぎずそこそこにあった方が、幸福度や成功に繋がりやすいものが中心でした。



 しかし、外向性については、外向性が高い人、低い人(いわゆる内向型人間)それぞれの、幸福度や成功度の高め方があるのが、他の因子とは大きく異なる点です。



 次回はそのあたりについて、お話していきたいと思います。







 ではまたお会いしましょう。






【参考文献】

ブライアン・R・リトル『自分の価値を最大にする ハーバードの心理学講義』2016年(大和書房)




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