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「心理学用語大全 ダニング・クルーガー効果」

更新日:2022年4月11日




 いつもお世話になっております。孫平です。


 今回は、おそらく知っている方も多いと思われる「ダニング・クルーガー効果」についてお話しします。




 それでは参りましょう。







ダニング・クルーガー効果とは


 これは、コーネル大学のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーの研究で明らかになった認知バイアス(思い込み)のひとつで、名称はこの2人の研究者の名前からとられました。




 

 この認知バイアスを簡単に説明すると、「能力が低い人は、自分の能力を過大評価しやすい。」ということになります。

 能力が低い人は、その能力の低さゆえに、自分のことを客観的に評価することができないために、このような現象が起きるわけです。



 一方能力が高い人は、自分の能力を概ね正確か、または少し低く評価する傾向があるようです。

 つまり能力が高い人は、その能力の高さゆえに、自分のことも客観的に評価できるわけです。

 少し低く評価してしまう理由は、おそらく、ソクラテスの「無知の知」みたいな考えを持ちやすいからだと思われます。勉強すればするほど、成長すればするほど、自分に足りないことや分からないことが見えてくる、だから「自分はまだまだ未熟なんだ。」という気持ちを常に感じているのでしょう。





 ある調査では、「自分は平均よりも優れていると思うか?」という質問に対して、約70%の人が「平均よりも優れている」と回答したそうです。

 普通に考えれば、平均よりも優れている人が50%、平均以下の人が50%と半々になるはずなので、平均以上の人が70%いるというのは明らかにおかしいのです。

 つまりこれは、平均以下の能力なのに平均以上だと勘違いしている人たちが一定数いるという証拠になります。








日常生活に活かす


 まず、仕事でもプライベートでも、自分が優れていることをことさらにアピールしてくる相手とは極力距離を置くようにしましょう。(まぁ一般的に、自分の自慢話ばかりする人は、自然に周囲から嫌われていくものですが…)


 この法則を素直に受け入れるなら、「自分はすごい」的な人は、「実際はたいしたことない」人である可能性が高く、皆さんの人生にとって取るに足らない存在かもしれません。


 

 友人であればそういうところも含めて認め合っていると思うので大丈夫です。


 あくまでも、皆さんの人生にプラスになる人かそうでない人か、はっきり言えば、その人と付き合うことで皆さんが得するかどうかという観点で見たときの場合です。



 全ての人にとって時間は有限であり、今この瞬間も私たちの命は確実に「死」に近付いています。

 そう考えると、自分にとって「どうでもいい人たち」と付き合っている時間は極力減らすべきです。なぜならその時間は、自分にとって「大切な人たち」のために使うべきだからです。




 本当に付き合っても大丈夫な人かどうか、その超手っ取り早い方法が、このダニング・クルーガー効果による判断というわけです。





 

 一方、皆さんは今までの人生の中で、「この人はなんか底知れない感じがあるな。」と思った人に出会ったことはありませんか。自分の手の内をなかなか見せないと言いますか。


 この法則を素直に受け入れるなら、「能ある鷹は爪を隠す(どちらかというと謙遜して)」というのは真実である可能性が高いことになります。


 皆さんもおそらく経験されていると思いますし、孫平の経験則でも「あまり多くを語らないが抜群に仕事がデキる人」は一定数いると感じています。



 やはり限りある人生ですので、そうした能力の高い人(仕事面だけでなく人間性とか様々な面で)と付き合っていった方が楽しいのではないかと思います。(そのためには、自分自身も一定水準の能力を備えている必要がありますが…。)



 自分のことを客観的に評価できる人や、低く評価していてもその理由をただの謙遜ではなく、しっかりと根拠立てて説明できる人がいれば、是非とも長期的な関係を築いていきたいものです。




 通常ただの謙遜では、自分のことを深く掘り下げ、見つめ直すようなことはしません。

 しかし、能力が高い人がもっていることが多い「自分の能力を客観的且つ正確に評価し、改善していく能力」に近いものとして、「知的謙遜」というものがあります。

 知的謙遜は、Googleが社員に最も求めている能力としても有名です。



 知的謙遜がある人かどうか確かめるためには、その人との会話の中で、何度も褒める場面を作ってみることです。(要するに、相手が自慢しやすい状況をつくるわけです。)

 このときに、「自分の今のレベルはこれぐらいで、これこれこういうところに改善の余地がある。だから、このような仮説を立てて改善策を実施している。途中このような評価改善プロセスを経て、最終的にはこんな状態を目指している。」みたいな感じで、自分のことを客観的に評価し具体的な改善策なんかを言ってきて、なんとなく未来を想像させてくれるのなら、間違いなく能力が高い人でしょう。



 まあそんな人はごく稀で、大抵の人は「いや〜、そんなことないですよ〜。」と普通の謙遜をしたり、能力の低い人に至っては「そうなんですよ!そのプロジェクトは私が中心となって成功させたんですよ!」みたいに普通に自慢を始めるでしょう。


 その自慢話を聞く時間は無駄ですが、その人とは付き合う必要がないと判断できるわけですから、手切賃だと思って割り切りましょう。






 相手を褒めてみて、ダニング・クルーガー効果の出方を確認して、おおよそのその人の能力を判断する。

 それによって、本当に付き合うべき人なのかどうかを見定めて、結果的に自分にとって大切な人たちとの時間を増やしていくことができると思います。




 ただ、このダニング・クルーガー効果の出方が、その人の全てを規定するものではありませんので、あくまでも参考程度にとどめておくのが望ましいでしょう。

 後になって、実はとても素晴らしい人物だったことを知った、なんてことにならないように。






【参考文献】

堀公俊『職場と仕事の法則図鑑』日本経済新聞出版(2020年)




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