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「ゆとり館でオフグリットの企画会議に参加してきた話」


 お世話になります。孫平です。


 本日、長者温泉ゆとり館さんにて、オフグリットの企画会議に参加してきました。


 オフグリットとは、電気・ガス・水道などのライフラインのうちの一つまたはそれ以上を公共のインフラに頼らず、自分たちで確保する生活様式らしく、ざっくりしたイメージだと半自給自足の生活みたいな感じを意味しています。



 私も今日初めて聞いた言葉なので正確に理解できていませんが、要は、オフグリットな生活様式やそこで使われている知恵やスキルが、防災や災害後の生活に役立つんじゃないか?という発想から、「防災✖️オフグリット」という企画を考えてみようという会議でした。





 最初に災害について学ぶために、消防士として糸魚川大火や数多くの災害現場で消火活動や人命救助をしてきた方からのお話があったのですが、その中でも特に印象に残っているエピソードがあります。



 その消防士の方が、県外のある避難所で目にした光景らしいのですが、



「避難所で、『このトイレは子どもたちが掃除をしました。』という貼り紙があるトイレは、そうじゃないトイレに比べて、圧倒的にキレイに使われるんです。」




 このエピソードを聞いたとき、私の頭の中に真っ先にあの本が思い浮かびました。




 そう、みんな大好き『影響力の武器』です。



 この消防士さんが話していた避難所のトイレのエピソードは、「社会的証明」がはたらいていたんじゃないかと思います。



 気付けば企画会議の内容はそっちのけで、私は「社会的証明」のことばかり考えていました。








『影響力の武器』で紹介されている社会的証明の実例


 さて、その『影響力の武器』では、社会的証明の実例としてこんなものが紹介されています。


 

 イギリス国税庁は長年、多くの税金を滞納する人々に悩まされており、その対策として税金を滞納することのデメリット(利息の負担、延滞料の発生、法的措置など)を滞納者に強調してきたが、効果はイマイチだった。



 しかし、督促状にある一文を加えただけで、滞納金6億5千万ポンドのうち、5億6千万ポンド、実に86%が回収できた。



 その一文とは、「大多数の国民は、納税期限までに税金を納めています」というものだった。



 このシンプルな一文に社会的証明のポイントが詰まっており、



①なるべく脳に負担をかけずに正しい判断をしたいという欲求(みんながしていることをマネしておけばだいたいは正しいし、自分があれこれ考える負担が減る)



②他者とつながり承認されたい欲求(みんなと同じことをしておけば除け者にされる可能性は低いし、みんなからも仲間として認めてもらえる可能性が高いからとりあえず安心)



③自分のことを肯定的にとらえたいという欲求(みんなが良いことをしているのに自分だけやらなかったら自分はダメな人間ということになりかねないし、そうはなりたくない)



督促状を受け取った人々は、この3つの欲求を同時に刺激されたことで、期限までに税金を納めるという行動をとりやすくなったと考えられる。




 また、いくつかの督促状では、「あなたが住んでいる〇〇地域の住民の〇〇%が、期限までに税金を納めています」というふうに、さらなる限定性を付け加えたところ、さらに効果が強くなった。

 



 このように、「みんながやっている=社会的証明」は、人の行動に非常に強力な影響を与えているのです。








なぜ「子どもが掃除したトイレ」はキレイに使おうとするのか?


 ではなぜ避難所の人々は、子どもが掃除したトイレを、そうじゃないトイレ(大人が掃除したトイレ)よりも、キレイに使おうとしたのでしょうか?



 先ほどの事例で挙げられている、社会的証明の3つのポイントに照らし合わせて考えてみます。





①なるべく脳に負担をかけずに正しい判断をしたいという欲求


 一般的にトイレにある貼り紙が使用者に伝えたいメッセージは、要するに「トイレはキレイに使ってくれよな!」ということに集約されると思います。



 この①の場合は、「子どもが掃除した」ということよりも、「トイレはキレイに使ってほしい」という意味が込められた貼り紙があり、それを他の多くの人も見ている=難しく考える必要はなくとりあえずキレイに使っておけば間違いないんだな、みんなもそうしているだろうし、と思わせてくれます。



 ただし、ここまでなら普通のトイレにあるよくある貼り紙と効果は同じぐらいだと思います。





②他者とつながり承認されたい欲求

③自分のことを肯定的にとらえたいという欲求


 ②と③は根本的なところで通じているのでまとめます。


 この場合、トイレをキレイに使わないような人間は社会からつまはじきにされるかもしれない、そういう人間は人としてダメだ、というのは普通の感覚の大人なら理解できることと思います。



 ここでポイントになるのが、よくあるトイレと違い、「子どもが掃除した」トイレだということです。



 この感覚をざっくり表現するならば、大人が大人に嫌がらせをするよりも、大人が子どもに嫌がらせをする方が遥かに罪が重いというようなもので、そういう社会通念が私たちにはあるために、「子どもが掃除した」という事実はトイレを汚すことへの抑止力として強力に作用していたのだと思います。



 普通に考えて、自分たちのために子どもたちが、ただでさえ避けたいトイレ掃除を一生懸命やってくれたのに、それを無碍にするような大人とは少なくとも私は仲良くできないし、おそらく周りのみんなもそう思っているだろうから私もちゃんとキレイに使おうと、そこにいたら思うはずです。(疲れやストレスでそこまで意識が回らない状態になってしまうのかもしれませんが)






 というわけで、「子どもが掃除した」というメッセージが普通の貼り紙よりも、社会的証明のポイントの②と③をより強力に刺激した結果、普通のトイレよりもキレイに使おうと行動する人が増えたのではないかという話でした。




 だからといって、この「子どもが〜」メッセージを、本当は子どもは何もやってないのに使用してしまうのはおススメできません。



 なぜなら、その嘘がバレてしまった場合、その後で素晴らしいメッセージを伝えても信用してもらえない可能性が高くなるからです。まさにオオカミ少年状態ですね。



 相手に伝えることは事実でないと、短期的には騙せても、長期的には必ずしっぺ返しをくらうことになると思います。





 トイレの貼り紙で言うなら、「キレイに使っていただくようお願いします」とかよりも、「多くのお客様がこのトイレをキレイに使ってくれています」というメッセージにするだけで社会的証明の恩恵を受けられるはずです。



 これなら、嘘の数字を出しているわけでもなく、あくまでも管理側の主観的な表現なので、仮に「嘘だ!」とか「証拠を出せ!」と言われても、相手を騙したことにはならないでしょう。(そんなこと言う奴はなかなかのレアキャラだとは思いますが)

 




 トイレの貼り紙に限らず、「相手にこういう行動をしてほしい」という場合は、そのしてほしい行動を「たくさんの人がやっていますよ!」というメッセージとして伝えてあげると良いと思います。




 オフグリットと全く関係のない話ですみませんでした。それではまたお会いしましょう。





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