
いつもお世話になっております。孫平です。
今回は、お金に関する私たちの思考の癖についてみていきたいと思います。
まず結論に軽く触れておきますと、私たちが感じるお金の価値は、その総額に応じて相対的に変化する、ということになります。
ではそのあたりについて詳しくみていきましょう。まずは以下の質問について、みなさんだったらどう答えるか考えてみて下さい。
1,000円が1,000円ではなくなるとき
①あなたは今、新しいカーナビの購入を検討しています。今いるA店では、目当てのカーナビが10,000円で売られています。
しかし、A店から歩いて10分のB店では、同じモデルのカーナビが9,000円で売られているようです。さて、あなたはどちらのお店で買いますか?
②あなたは今、新しい車の購入を検討しています。今いるA店では、目当ての車の本体価格が200万円。カーナビも希望すると総額で201万円になります。
歩いて10分のB店でも、同じ車の本体価格は200万円。カーナビを希望した場合は総額で200万9千円になります。
さて、あなたはどちらのお店で買いますか?
細かい設定はさておき、なんとなく私たちが行う思考の癖に気付いていただけたのではないでしょうか。
①の場合は、10,000円のA店より、9,000円のB店で買うと答える人が多くなります。
一方②の場合は、そのまま201万円のA店で買うと答える人が多くなります。
これが私たちが感じる、お金の価値はその総額に応じて相対的に変化する、ということです。
つまり、10,000円の内の1,000円の方が、201万円の内の1,000円よりも価値が高い、と私たちは感じてしまうのです。本来のお金の価値は、どちらも同じ1,000円にもかかわらずです。
相対的ではなく絶対的なお金の価値を意識する
先ほどみてきたような思考の癖は、私たちの日常生活で無意識といっていいぐらい当たり前に使われています。
お金持ちならいざ知らず、普通の人が、特に何か大きな買い物をするときは、この思考の癖には十分注意するべきでしょう。
ほぼ本能的にこの思考に入るので、根本から排除することは不可能です。まず大切なのは、お金の価値を相対的に判断している自分自身に気付くことです。
そして、そのお金(例えば1,000円)があったら他にどんな物が買えるか、どんな経験ができるかや、そのお金を今払ったら他にどんな可能性が失われるかといったことを考えるのです。
つまり、200万円の中の1,000円ではなく、1,000円そのものが持つ絶対的な価値について考えるということが有用かと思われます。
もちろん場合によっては、多少お金がかかってもその分時間や労力が減らせて、結果的にそちらの方が得をするということもあるかと思います。
先ほどの質問で言えば、10分で1,000円の得になるわけですから、時給6,000円以下の人にとっては、10分歩いてでもB店で買うべきで、それ以上稼いでいる人はそのままA店で買うべきということになります。あくまでも計算上の話ですが。
仕事に活かす
多くの人がこうした思考の癖に気付かず生活しているのであれば、これを逆手にとってビジネスに活かさない手はありません。
この癖を非常に上手く利用している代表としては、やはりカーディーラーが挙げられるでしょう。
彼らの常套手段は、車の購入がほぼ決まると、オプション品をどんどん勧めて稼いでいくことです。しかし、お客の気持ち的には、「最初の見積額よりも高くついちゃったけど、かっこいいオプションも付けることになったし、良い買い物ができたからよしとするか。」といったところでしょう。
300万円や400万円の内の、10万円や20万円は、相対的な価値付けに陥っている人からみたら端金に見えるのです。普段の生活ならかなりの大金にもかかわらずです。
カーディーラーは、そうなる人間の心理を見逃しません。
みなさんの中にも、物やサービスを売る仕事をしている方は多いと思いますし、経験的になんとなく分かってる方もいるかと思います。
知ってる方も初めて知った方も、お客が高額な商品やサービスを購入するときは、そのお客に自信をもっておすすめできるオプションがあれば、恐れずにどんどん提案していきましょう。
相対的なお金の価値付けに陥っているお客は、おそらくかなりの確率で気持ち良くオプション購入に踏み切るでしょう。
今回の知識に基づいた行動が結果的にお客の幸せに繋がり、自分や会社も潤うのであれば、使わない手はありませんよね。
【参考文献】
ダニエル・カーネマン(2012)『ファスト&スロー』早川書房
ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー(2018)『アリエリー教授の「行動経済学」入門お金篇』早川書房
マッテオ・モッテルリーニ(2008)『経済は感情で動く』
Kommentare