いつもお世話になっております。孫平です。
今回のタイトルを見ただけでは、いったい何のことかよく分からないでしょう。
なので、早々に事例を紹介したいと思います。
ハリケーンと募金の関係
心理学教授のJ・チャンドラー氏は、大きな被害が出たハリケーンとその後に行われる復興募金の関係を分析しました。すると、非常に興味深いことが分かったのです。
それは、そのハリケーンの募金に寄付した人の中で、ハリケーンの名前と同じ頭文字をもつ名前の人が飛び抜けて多かったということです。
例えば、ハリケーン・リタ(Rita)の復興募金に協力した人は、名前の頭文字が「R」の名前(ロバートとかローズとか)の人が圧倒的に多く、ハリケーン・カトリーナ(Katrina)のときにも同様に、頭文字が「K」の名前の人の割合が多かったのです。
チャンドラー氏は、過去に遡ってハリケーンと復興募金の関係を分析したところ、全ての事例で同じようなパターンがみられたのです。
つまり、寄付をする人は、そのハリケーンと同じ頭文字をもつ人が常に突出していたのです。
名前のもつ力
頭文字が同じというたったそれだけのことなのに、このような現象が起きるのです。
とても不思議なことですが、私たちは誰もが、自分の名前に無意識のうちに注意を向けています。
ご存知の方も多いかと思いますが、「カクテルパーティー効果」という現象があります。
これは、パーティーのようにいろんな人の話し声やいろんな物音が混ざり合っている環境でも、自分の名前が口にされたときには、それがはっきりと聞こえるという現象です。
もし、そういうのはあまり信じられないという人がいたら、友人数名にちょっとした実験をしてみて下さい。
白紙の紙を渡して、そこに自分の好きなひらがなを3つとか5つ書いてもらう、それだけです。
おそらく、そこに書かれたひらがなには高確率で、書いた人の名前に使われているひらがなが入っているでしょう。特に、頭文字は。
こんな事例も
他にも、ロバート・チャルディーニらがイギリスの医師たちと共同で行った実験では、
診察予約を促す携帯メールの文面に、患者のファーストネームを入れただけで、予約のすっぽかしが57%も減少した。
しかし面白いことに、患者のフルネームを入れた場合は、まったく変化が見られなかった。
つまり、効果が表れたのは患者のファーストネームを使ったときだけだった。
また、イギリス政府がつくった、優れた行動科学者で構成されたチーム BIT(行動洞察チーム)の調査では、
罰金滞納者への支払督促メールに、罰金金額だけでなく、違反者のファーストネームも入れておくと、5割近く反応率が上昇した。
ということも分かっています。
生活に活かす
このような、名前のもつ注意を引くという性質を、私たちが普段の仕事や生活の中で活かしていくにはどのような方法が考えられるでしょうか。
例えば、社内であるプロジェクトを任せられたときは、社員の頭文字で一番多いひらがなや漢字を調べたり、絶対に味方になってほしい社員の頭文字を調べて、そのプロジェクト名の頭文字とリンクさせるとか、
ターゲットとなる顧客の頭文字で一番多い漢字やひらがなを調べて、商品やサービスのPR文章のタイトルの頭文字とリンクさせたり、新商品や新サービスであれば、その名称を顧客に多い頭文字とリンクさせたり、
子どもに勉強してほしい、本を読んでほしいと思うなら、自分の子どもの名前の頭文字と、同じひらがなや漢字で始まる名前のドリルや本を、そっと置いておくとか、
彼氏や夫(または彼女や妻)におねだりして買ってほしい物があるなら、多少優先順位を入れ替える必要はあるかもしれませんが、その人の名前の頭文字と同じ頭文字の商品をお願いしてみるとか、
とにかく、自分の望み通りに動いてほしい人たちの頭文字にアンテナを張って、物でもコトでも自分が望むものの名称の頭文字とリンクさせれば、願いが叶う可能性が高くなるかもしれないというわけです。
名前のもつ力、それを信じるか信じないかは、あなた次第です。
【参考文献】
スティーブ・J・マーティン、ノア・J・ゴールドスタイン、ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器 戦略編』2016年(誠信書房)
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