いつもお世話になっております。孫平です。
最近、『限りある時間の使い方』(原著『FOUR THOUSAND WEEKS』)という本を読んだところ、私の中ではここ数年でベスト3に入るぐらい良い本でした。
著者は、『解毒剤 ポジティブ思考を妄信するあなたの「脳」へ』や、『HELP!ー最強知的"お助け"本』などで有名な、オリバー・バークマンです。
本書は、よくある時間術に関するビジネス本とは一線を画してまして、人生という時間をどのように捉え生きていくか?という、「時間に対する考え方」が主な内容になっています。
そのため、読む人によって本書の解釈は当然違ってくると思われます。
今回は、孫平のフィルターを通してになりますが、本書のポイントを箇条書きにまとめてみます。
言うまでもなく、一番良いのは自分で購入して読んでみることです。
この本は、現代人なら買って損はないと個人的には思っておりますので、興味のある方は是非。
私たちの人生は「4000週間」
・時計のなかった時代は「時間が足りない」といった感覚はなかった。
・工業化が進み、時間を基準に働き生活するようになってから、人々の時間に対する考えは「管理・コントロールできるもの」「より良い人生を送るために、効率的に使わなければいけない道具」というものに変化していった。
・時間を効率的に使うツールや、タイムマネジメント術を使って多くのタスクをこなせても、捻出できた時間に新たなタスクが隙間を埋めるように入り込んでくる。つまり、どんなに素晴らしいツールやテクニックを使っても、常に「時間が足りない」状態が続く。
・私たちは「今」という時間を、未来のために過ごしがちである。しかし、可能性は低いにしても、どんな人にも次の瞬間に命が終わる可能性が常にある。つまり確実に言えることは、私たちに与えられている時間は、80歳や90歳まで生きられる時間ではなく、常に「今」この瞬間しかないということだ。
・時間は有限である。今この瞬間に何かをするということは、別の何かはできないということであり、自分が望む全てのことを同じ時間に行うことはできない。
・選択肢を捨てる喜びを味わう。時間は自分の思うようにコントロールできるものではない。だからこそ、できなかったこと(しなかったこと)を後悔するのではなく、自分が選び取った行動を存分に味わいつくせばいい。
・SNSや動画コンテンツによって、私たちの時間が日々奪われていることは意識しなければいけない。
・計画とは、私たちのただの「意思表示」であり、未来に確実に約束された「実体のあるもの」ではない。何事も無計画に、そのときの気の向くままに生きればいいということではなく、計画通りにいかないのが当然であり、自分に未来をコントロールすることはできないという事実を認めることが大切。
・「今を生きる、今に集中する」ことは一見良いことのように感じるが、これは、今この瞬間を何らかの目的のために従わせようとしている「時間の道具化」のアプローチである。今を生きるための最善のアプローチは、今に集中しようと努力することではなく、「自分は今ここにいる」という事実にただ気付くだけでいい。
・私たちは余暇を、次に来たる仕事のために過ごしてしまいがちだ。また、余暇を「有意義に」過ごさないともったいないとさえ感じてしまう。それも「時間の道具化」の一つと言える。未来のことは気にせず、全く無意味で非生産的な趣味に没頭する余暇があってもいいのだ。
・私たちは忙しさに依存している。忙しいとなぜか安心し、時間を持て余すとなぜか落ち着かなくなる。ネットの繋がりが悪く、次の画面に変わるまでのたった数秒間の空白でさえイライラしてしまう。しかし、留まることで見えてくることもある。退屈な時間を味わおう。何をするでもない時間こそが、本当の自分の時間なのかもしれないのだから。
・スケジュール通りに進まないと気が済まないような生産性オタクの人は、そのスケジュールを少しだけ緩めてみてほしい。そして、もっと家族や友人、地域の人たちと時間をシェアしてみよう。時間を独占することが必ずしも良いことではないと気付くかもしれない。
限りある時間を豊かに生きるためのツール
本書が繰り返し述べていることは、人生は有限であるということ、そしてその時間はほとんどコントロールできないということです。
そこから、その事実に抗うのではなく、潔く受け入れた方が、実はずっと豊かに生きられるということが、様々な事例や研究から明らかにされています。
本書の付録として、「有限性を受け入れるための10のツール」というものがありますが、最後に孫平なりにそれを簡単にまとめて終わりにしたいと思います。(孫平がまとめたところ6つになりました。)
①一度に取り組むことは、一つだけにする
やることがたくさんあっても、不安を鎮めるためにあれこれ手をつけてはいけない。本当に大切なことだけに、まずは集中して取り組もう。
そのためには、その他のことを先延ばしにしたり、切り捨てる勇気も必要である。
②うまくできないことを、あらかじめ許容しておく
限りある時間の中では、失敗することも当然あるし、できないことだってある。
やらなければいけないと思っていた部屋の片付けが今日もできなくても、自分を責める必要はない。重要なプロジェクトが終わるまでは仕事に専念し、余裕ができたらそのエネルギーを家のことに使うなど、計画的にできないこと(やらないこと)を許容しておこう。
③できなかったことではなく、できたことに意識を向ける
部屋の片付けができなかったことを気にして、自分はなんてだらしない人間なんだ、と思うのではなく、「部屋の片付けは後回しになってしまったけど、仕事の方はだいぶ片付いた!」と、できたことに意識を向けよう。
限りある時間の中で、自分が望むこと全てを完璧に行うことは不可能である。できなかったことに意識を向けてしまうと、永遠に満たされることはない。
④デバイスの機能を減らす
私たちはもはやスマホやタブレット無しでは生きていけない(ような感覚に陥っている)。そしてそれらデジタルデバイスに無意味に奪われている時間は膨大である。
ここでいきなり、スマホを手放せと言っても現実的ではない。そこでまずは、使っていないアプリを削除しよう。それができたら、たまに使っているけど自分のメリットになっていないようなアプリを消そう。これだけでも、だいぶスマホがスッキリして、必要なものしか残らなくなる。
また、画面表示をカラーからグレースケールに変更することで、スマホの使用時間が減少するという効果も明らかになっているため、参考にしてみてほしい。
⑤日常をより深く味わい、新しさを見出す
歳をとると時間の経過が早く感じる。これは、私たちの脳が情報量の多さで時間の経過を測っているためである。
子どもの頃は毎日が新しいことの連続で、1日がとても長く感じられた。しかし年齢を重ねると、日常生活の大半のことは既知であり、同じことの繰り返しになる。つまり、脳が新しく取得する情報量が減少するため、時間の経過が早く感じるのである。
これに対するアドバイスとして、「新しいことをしてみる」というのがよく挙げられるが、本書でもさんざん述べられている通り、私たちには思っているより時間がない。
しかし、限りある時間を切り詰めてわざわざ新しいことをする必要はない。そうではなく、日常生活の一瞬一瞬をもっと深く味わい、その中に新たな発見や学びを見出すのだ。比喩的に言えば、ハイビジョンで見ている日常生活を、4K、さらには8K並みの解像度で過ごしてみることで、見えていなかった素晴らしい世界が見えてくるかもしれないということだ。
⑥何もしないことを練習する
私たちはとにかく、何かしていないと気が済まない。何もしないことに耐えられないのだ。何もしないことに耐えられない現実逃避として、どうでもいい何かをしてしまうのだ。
哲学者のパスカルも次のような言葉を残している。
「人間の不幸はすべて、1人で部屋でじっとしていられないことに由来する」
瞑想の指導者であるシンゼン・ヤングは、「何もしない瞑想」というものを勧めている。通常の瞑想では、自分の呼吸に集中するとか、身体の感覚に集中することが多いが、「何もしない瞑想」は本当に何もしない。
具体的には、まず5〜10分のタイマーをセットして椅子に座る。そしてそのまま何もしないように努める。呼吸にも集中しなくていい。自分が「何か」をしているなと気づいたら、再び「何もしない」ように努める。
やってみると分かるが、「何もしない」ことは恐ろしく難しい。しかし、挑戦してみる価値は大いにある。なぜなら、「何もしない」ことができる人は、自分の時間を自分のために使える人なのだから。
長くなりましたが、今回はこれで以上になります。
現代に生きる私たちの胸に、グサグサと刺さりまくる言葉が満載で本当に良い本だと思いますので、是非読んでみて下さい。
それではまたお会いしましょう。
【参考文献】
オリバー・バークマン『限りある時間の使い方』2022年(かんき出版)
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