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「自然のパワー① 視覚と自然 後半」

更新日:2022年4月11日




 いつもお世話になっております。孫平です。

 

 さて、前回の続きになります。


 

 

 今回は、じゃあなんで自然の風景とか緑を見ると身体に良い影響が出るの?っていうところを解説していきます。


 少し難しい内容かもしれないので、興味のある方だけ見ていただけたらと思います。前回の、視覚と自然前半でお話しした通り、とにかく自然の風景が見えるところで過ごそう、それが難しいなら観葉植物を部屋に置こう、ってことを実践してもらえれば基本オッケーですので。




 それでは有志の方だけ参りましょう。






フラクタル


 キーワードになるのが、「フラクタル」です。

 

 フラクタルとは、1975年にフランスの数学者ブノワ・マンデルブロが発見したもので、一見複雑で混沌としているものの中に見られる、単純で幾何学的な配列パターンのことです。



 

 このフラクタルパターンは、この世のあらゆる物やことに見られるのですが、自然界の例を挙げてみると、雲、海岸線、海の波、植物の葉、木の枝、川の増水と減水、銀河の集まりなど、生物、風景、宇宙のなかによく見られます。



 例えば木の幹や枝の場合、ひとつの枝ともっと小さい枝には同じ相似形(似ている形のパターン)があり、どんどん小さな規模まで追っていっても同じパターンが繰り返されていきます。(葉っぱの葉脈などもそうです。)



 そして、このように自然界に存在するさまざまなパターンは、低度から中等度のフラクタルで構成されています。(パターンが細かく込み入ったものになるほど、フラクタル度は高くなります。)







フラクタルが私たちに与える影響


 ナノ粒子物理学者リチャード・テイラーが行った実験では、さまざまなフラクタルパターンの画像を被験者に見せ精神性発汗を測定したところ、フラクタル度が低度から中等度の画像を見たときに、ストレスからの回復力が60%も向上することが分かりました。



 さらに、テイラーとカロリーネ・ハイェルヘが研究を進めたところ、やはり、フラクタル度が低度から中等度の画像や風景を好む被験者が圧倒的に多く、その度合いの画像を1分間見ただけで、被験者の脳内にアルファ波(リラックスしているときの脳波)が出ることが分かりました。


 そして、海馬傍回という、感情を調整し音楽を聴いているときに激しく活性化する部位までも、活性化することが分かったのです。







自然と身体の共鳴


 フラクタルパターンが自然界に多く見られるのは先ほど述べた通りですが、私たち人間の体、例えば肺、毛細血管、脳のニューロンなどにも、同様のパターンが見られます。



 そしてここが今回のポイントですが、実は目の瞳孔が動くパターンそのものが、フラクタルであることが分かったのです。

 しかも、その動きのフラクタル度は中等度。




 つまり、自然の中に見られるフラクタルと同じだったのです。





 ここから考えられるのは、私たちが自然の中で過ごすと心地良さを感じるのは、同じ生きとし生ける動植物に愛情を感じるからでも、綺麗な風景に感動するからでもなく、例えば樹木などと目の動きのフラクタル度が同程度なために、視覚がスムーズに情報を処理できる(ストレスを感じない)からなのかもしれないということです。





 人類の歴史を振り返ってみれば、もともと人間は長い期間を大自然の中で生きてきました。つまり、自分たちと同じフラクタル度をもつ自然に囲まれて生きてきたのです。


 


 人間の身体がここ数百年の時代の変化に追いつくはずもなく、私たちの身体は今も遠い昔の祖先の身体とほとんど同じです。


 

 そのため、祖先たちの時代にはなかった人工物、例えばコンクリートの建物や都会の交差点のような光景を目にすると、脳は無意識であれ不快感やストレスを感じるのです。

 

 

 実際に、都会の風景を眺めているときは、視線が頻繁に固定し、まばたきの回数が増えることが分かっています。それはつまり、目(脳)が、景色の構造を読み解こうと懸命になっていることの表れなのです。




 

 

 普段生きている世界が、本来の人間の身体にとっては不自然なだけなのですが、今を生きている私たちは、生まれたときからその不自然な世界が標準になっています。



 私たちの身体と同じフラクタルをもつ自然界のものを見ると視覚野がリラックスするというのは、ただ単に、今も昔も変わらない人間の身体が正常に反応しただけなのかもしれません。






 現在この分野では、バーチャルの自然の開発も行われています。しかし、今のところ、本物の自然に触れたときの効果を再現できるものはありません。



 私たちには、そのような素晴らしい発明の完成を待っている時間は、もしかしたらないかもしれません。





 しかし、そんなことを心配する必要はありません。

 私たちが自然の恩恵を受ける確実にして唯一の方法があるからです。


 それは、




「外に出ること」です。




 たったそれだけで、遠い祖先の時代から脈々と受け継がれてきた、私たちの身体に備わっている自然と共鳴する遺伝子が作動し、本来の人間としての力を発揮することができるのです。



 

 さぁ、今すぐスマホを置いて、窓を開けて外の景色を見てみましょう。



 そして散歩に出かけましょう。



 なぜなら、数多くの素晴らしいフラクタルたちが、皆さんのことを待っているのですから。






【参考文献】

フローレンス・ウィリアムズ『 Nature Fix 自然が最高の脳をつくる』2017年(NHK出版)





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