お世話になっております。孫平です。
それではフレッシュスタートの続きでーす。
フレッシュスタートは、日付け上の新しいタイミングや、良くも悪くも人生における大きな出来事のあと、環境が変化したあとに効果を発揮することは前回述べた通りです。
また、その変化の度合いが大きいときほど、フレッシュスタートの効果も大きくなることもお話ししました。
しかし、私たちが日々過ごす中では、そんなにたくさんフレッシュスタートのタイミングが訪れるわけではないのも事実です。
それでは私たちは、フレッシュスタートのタイミングが訪れるのを、ただ待っていることしかできないのでしょうか?
フレッシュスタートを予感させる「初日感」の出る名前をつけよ!
・ミルクマンらがペンシルベニア大学の学生を対象に行った調査実験では、行動改善を開始してもらいたい日付の呼び方をいろいろと変えてみた。
例えば、3月20日を一部の学生には「春の初日」だと説明し、残りの学生には「3月の第3木曜日」だと説明した。他にも、5月14日を「ペンシルベニア大学の『夏休みの初日』」だと説明したりした。
その結果、「初日感」の出る名前で日付けを説明された学生たちの方が、ジムに通う、睡眠環境を改善する、SNSの時間を減らすといった行動改善に取り組む傾向が高いことが分かった。
・ミルクマンがペンシルベニア大学の教職員を対象に、退職貯蓄を促す手紙を用いた実験では、「次の誕生日」や「春の初日」と書かれた日に貯蓄を始めるよう促す手紙は、適当などこかの日に貯蓄を始めるように促す手紙に比べて、30%も貯蓄を始める人が多かった。
ミルクマン先生のこれらの実験結果から、新年や大きな出来事のあとでないごくごく普通の日でも、その日を「初日感」の出る名前で呼べば、フレッシュスタートの効果を得られるということが分かります。
つまり工夫次第で、私たちはいつどんなときでも、フレッシュスタートのタイミングを自ら作ることができるということです。
これはなかなか心強い知見でありましょう。
しかし、ヘンチェン・ダイの研究から、フレッシュスタートが逆効果になってしまうことがあることも分かっています。
好調なときは逆効果になる⁉︎
・ヘンチェンがMLB(アメリカのプロ野球リーグ)の過去40年間のデータを分析したところ、それまで成績不振だった選手がチームを移籍すると、移籍後の成績が大きく改善する傾向があった。
一方、それまで成績好調だった選手がチームを移籍した場合、移籍後の成績がおしなべて低下していることが分かった。
・ミルクマンの研究では、もともとジム通いの習慣が身に付いていた学生の多くが、長期休暇を挟むと、その習慣が途絶えてしまうことが分かった。
これらの結果を踏まえてミルクマン先生は、「フレッシュスタートによるリセットは、成績不振者にとっては成績向上の機会になるが、成績がすでに良い人たちにとってはむしろ害になる。」と述べています。
これは自分自身はもちろんですが、誰かを指導やマネジメントしたりする立場にいる人は、特に気を付けておきたいポイントでしょう。
おわりに
このフレッシュスタートは、主に自分自身の行動改善に役立つ方法として紹介してきました。
しかし、すでに皆さんもお気づきの通り、ここまで紹介してきたことを他人に適用すれば、彼らをこちらが望む行動に導くこともできますし、その人の助けになることもできるでしょう。(もちろん、悪い方向に導くことも可能でしょう。)
是非、自分自身だけではなく、皆さんの周りの人にも「フレッシュスタート」をシェアしていただいて、「今年こそは!」をともに実現していきましょう。
【参考文献】
ケイティ・ミルクマン著、櫻井祐子 訳 『自分を変える方法』ダイヤモンド社(2022年)
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