いつもお世話になっております。孫平です。
今回は、組織の中でも個人でも、成功したり出世したりする女性は、どのような行動をとっているのかという点について見ていきたいと思います。
女性が、出世したり経営層に行き着くことがなかなかできない理由としてよく挙げられるのは、
・会社や業界の非公式なネットワークに参加する機会が、男性よりも少ない
・世間的に「女性がやる仕事」だと思われている幅広い業務が負担となり、職業上の人間関係を築く時間が足りない
・結婚、出産、子育てのため、仕事から一時的に離れたり、退職する必要が出てきてしまう
といったことだと言われています。
そんな中でも、組織の中や個人でも、周りに強力なネットワークを構築し、リーダーとして活躍している女性も数多く存在します。
そして、彼女たちと、普通の女性たちの何が違うのかを調べた研究がありますので、ご紹介しましょう。
成功する女性に見られる4つの特徴
研究チームは、幅広い業界の30社以上に勤務する男女16,500人から、過去15年にわたるデータを収集分析し、その後、女性エグゼクティブ数百人から聞き取り調査を実施しました。
この研究により、成功している女性たちの職業的なネットワークづくりには、4つの特徴があることが分かりました。
①時間を効率的に使っている
様々な調査研究から、職場において女性は男性よりも、同僚を助けるような協働的な働きを求められていることが分かっています。
これは、「女性」というアイデンティティとステレオタイプによる影響だと考えられています。
しかし、「誰かを助ける」ということは、同時に、「誰かを助けない」ということでもあります。
成功している女性はこの点をよく考えており、優先順位や重要度が低い仕事(誰でもできるような仕事や、女性だからというだけで求められている仕事など)には堂々と「NO」と言い、組織全体にとって重要な仕事や自分にしかできない仕事には積極的に「YES」と言う傾向があるのです。
つまり彼女たちは、女性に特有の仕事に対して疑義を呈し、本当に自分がその仕事をする必要があるのか、するにしても今する必要があるのかといったことをよく考え、戦略的に時間の使い方をコントロールしているのです。
②人脈に流動性がある
いくつかの調査データで示されているのは、女性の人間関係は、時間が経つにつれてゆるぎないものになり、相互的になり、絆を深めていく特徴があるということです。
しかし変化の激しい現代では、いつも同じ人たちを頼りにしていると、期待している助けが得られずマイナスの影響が出る可能性があります。
一方、成功する女性のネットワークは、とても流動的です。
自分が置かれている状況に対して、その分野のオピニオンリーダーや、足りないスキルを補ってくれる人、新しいアイディアをくれる人や、実務的な面でサポートしてくれる人など、何かを達成するために手助けしてくれる様々な人について思いを巡らせ、コンタクトをとります。
また必要に応じて、昔からの友人など旧来の関係を一時的に抑制したり、あるいは断ち切ったりもします。
長い時間を過ごした人ほど大切にする女性にとっては、このような人間関係のあり方は嫌悪するものかもしれません。
しかし、このような人間関係は、男性の中ではごく当たり前に行われていることですし、職業における人間関係には様々なパターンがあるのが普通なのです。
長期にわたって親身にサポートしてくれる人が周りにいるのは、女性ならではの人間関係の特徴です。
この特徴は活かしつつ、常に新しい人脈も同時につくっていくことが、現代においては望ましいと言えるでしょう。
③人脈に境界がない
成功する女性のネットワークは、社内なら他部門、社外なら他業界、地理的に違う場所の人など、会社や組織の枠を越えて、幅広く多様な人々と繋がっています。
ここでも一般の女性たちは、そのような人間関係は心地良くないとか、出世主義で嫌だという理由で、ネットワークづくりにおけるこうした戦術を避ける傾向にあります。
しかし、女性であれ男性であれ、新しい情報や最先端のイノベーション、そして昇進を求めるのであれば、このように幅広い人脈と繋がることは必要不可欠です。
それでもやはり、意欲はあっても、女性が個人の力で行動を起こすのはとても勇気のいることです。
フォード・モーターや、ブーズ・アレン・ハミルトンなどの企業では、有望な女性たちを社内の様々な部門から集めて、経営陣を交えた会議を定期的に開催しているといいます。
つまり、ネットワークづくりの実践を、企業として制度化しようとしているのです。
女性があらゆる面で男性よりも優れていることは、多くの研究で明らかになっているのですから、企業がそうしたネットワークづくりの場を設けることで、社内の有望な女性の人脈が広がりその企業の業績アップに繋がる可能性は十分あります。
企業にとっても、個人としての女性にとってもおいしい話なのではないでしょうか。
④知性と感情的知性をバランスよく駆使している
20年以上にわたる仕事における調査記録を精査した結果、優れた業績を上げる人たちは、周囲の人たちに元気を与える人たちであることが分かっています。
つまり、周囲をやる気にさせるのが上手く、チームや組織全体の成果を牽引していく人たちです。
しかし男性と女性では、それぞれ異なる能力でチームや組織にエネルギーを与えると考えられています。
なかでも成功する女性は、知性と感情的知性を、同時にバランスよく駆使することに長けています。
まずそのような女性は、自分がもっている知識やスキルや教養を、控えめに見せることはなく、自分に能力がある証拠を示します。
そして同時に、ユーモアや思いやりや傾聴のスキルなど、女性が男性よりも優れていると言われている感情的知性も駆使して、チームの中に信頼感や温かな雰囲気をもたらし、より創造的な仕事ができるよう手助けをするのです。
このような感情的知性を活かして、周りの人たちに影響を与えていくという行動は、男性よりも女性の方が得意としていますが、これだけに偏っていては単なるお人好しになってしまいます。
重要なのは、もともと優れているこの感情的知性は活かしつつ、自分がもっている能力が仕事にどのように活かせるかを冷静に分析し、誰もが納得できるよう論理的にアピールし、感情面と実務的な能力面の両方から周囲の信頼を勝ち取っていくことです。
以上ここまで、成功する女性の主にネットワークづくりにおける4つの特徴を見てきました。
もし読者の皆さんの中に、どんどん出世したいとか社長になりたいという女性の方がいるのであれば、まず個人としてはこの特徴をもとに、今までの人付き合いの方法を変えてみるのが良いでしょう。
それと併せてやはり企業側も、女性がより幅広いネットワークを築いていけるよう手助けする必要があります。
経営者の方は、今後そのような視点も持っていかなければいけないでしょう。
【参考文献】
"How Successful Women Manage Their Networks," by Inga Carboni et al. (working paper)
"The Secrets of Successful Female Networks," HBR, November-December 2019.
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