いつもお世話になっております。孫平です。
今回は、ロバート・B・チャルディーニの名著『影響力の武器』から、基本の6つの武器について簡単に見ていきたいと思います。
この6つの武器とは、人の態度や行動を変化させる非常に強力な心理作用のことです。
人間の根源的な欲求に基づくものなので、私たちとしては必ず知っておきたい知識でしょう。
これを理解すれば、仕事やプライベートで自分の要求を相手に受け入れてもらいやすくなります。
また、この武器を使う相手の手口も分かるので、自分自身や大切な人を不利益から守ることもできるでしょう。
それではさっそく参りましょう。
①返報性
まず1つ目の武器は、返報性です。これは、相手に物でも事でも何かをしてもらったら、お返しをしてしまう、という心理作用です。
まぁ、ギブアンドテイクみたいなことなのですが、ギブアンドテイクは普通、それなりに関係のある人との間で成立するものですよね。
しかしこの返報性は、何かをしてもらった相手がたとえ見ず知らずの人や嫌いな人だったとしても、お返しをしなくてはならないと思ってしまうのです。
ではなぜこのような心理作用が働くのでしょうか。
ポイントは、私たちは決して相手のためを思っているわけではないという点です。
実は私たちがお返しをするのは、お返しをしないような薄情な人にはなりたくないという心理が働くからなのです。
別に好きでもない人でも、その人から何かをしてもらった時は、お返しをしないとなんだか気持ち悪かったり、落ち着かないという経験はありますよね。(今ではあまり見なくなりましたが、スーパーの試食コーナーなんかはまさにその典型ですね。)
これは遥か昔の、私たちの祖先の時代から受け継がれてきた本能なのですが、ここでは細かいことは省略します。
とにかく、「情けは人の為ならず」の精神をもって、相手にどんどん恩を売っていけば、それ以上の見返りが期待できるということを覚えておいて下さい。
②一貫性
2つ目は、コミットメントと一貫性です。同じようなことなので、一貫性とだけ覚えておけばオッケーでしょう。
これは、自分が一度とった態度や考えは一貫して持ち続けるという心理作用のことです。
例えばみなさんは、昔からずっと好きな食べ物(お店)や、タレントや、スポーツチームはありませんか。
では、なぜそれがずっと好きなままなのでしょうか。
いろいろな理由が挙げられるかと思いますが、これも私たちの本能に基づいている部分が大きいのです。
要は、私たちは自分の選択が正しいと信じたいのです。
たとえ一度とった態度や考えでも、その後により良いものが出てくれば、そちらに変えるのが合理的でしょう。
でもそうせずに、自分の態度や考えを一貫して守ろうとするのは、もし変更してしまうと今までの自分を否定することになるため、それを必死に防ごうとするからなのです。
これはつまり、相手に最初に良い印象を与えられれば、その後に多少の粗相があったとしても、相手は自分の態度や考えを変える(否定する)ことを避けるため、みなさんを好きでいてくれる可能性が高いということです。
しかし逆も然りで、最初に悪い印象を与えてしまうと、その後で良いことをしても、相手は自分の態度や考えを変える(否定する)ことを避けるため、最初の悪い印象を覆すのはなかなか難しくなるでしょう。
また、セールスなんかでは、売りたい商品についてのポジティブな言葉や行動を客からとってもらえれば、成約に繋がる可能性がぐっと高くなるでしょう。
なぜなら、客自身がその商品は良いものだという立場をとってしまったので、それを否定するような言動はしたくてもできないからです。(自分自身を否定することになってしまうため。)
まぁそういうセールスにやりがいを感じるかどうかは分かりませんが、商売は売ってなんぼ、売れてなんぼですからね。
でも、自分がそういうセールスを受けたときは、この手口を知っていれば合理的な判断ができると思います。
③社会的証明
3つ目は、社会的証明です。これは例えば、30代女性の70%が使っているとか、全世界で100万部売れているとか、10年連続売上No.1という感じで使われることが多いですね。
つまり、世間から認められている、評価されている、みんなやっている、という情報に、私たちはとても魅力を感じてしまうわけです。
では、なぜそのような心理が働くのでしょうか。
これもやはり、私たちの本能に基づいています。
要するに、私たちは何かを選択するときに余計な手間を省いてできるだけ楽をしたいのです。
そして社会的証明は、この欲求を満たしてくれるわけです。
大勢の人がやっていて、大勢の人から認められ評価されているということは、それなりに良いものである可能性が高い、と私たちの脳は判断します。
そして、みんながやっていることにも欠点はあるだろうし、それ以外の選択肢でも探せばもっと良いものがあるだろうけど、社会的に認められ評価されているものなら少なくともハズレはないだろうから、いろいろ考えるのもめんどくさいし、社会的証明に頼ろう、ってな感じの思考回路ができるわけです。
ここでは、私たちの脳は面倒なことが大嫌いで、できるだけ楽をしたいという性質を覚えておいて下さい。
これが分かっていれば、最初の例の、30代女性の70%が使っているというようなキャッチコピーで、一気にターゲットの気持ちを掴むことができるでしょう。
とにかく、相手の考える負担をできるだけ軽くしてあげることで、こちらの要求を通しやすくなります。
今回は前半の3つの影響力の武器について、簡単にお話ししました。
次回は後半の3つを紹介したいと思います。それではまた。
【参考文献】
ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器 第三版』2014年(誠信書房)
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