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「小さな嘘が、あなたを殺す」

更新日:2022年2月8日




 いつもお世話になっております。孫平です。



 みなさんは嘘をついたことはありますか?

 そうですよね、嘘をついたことがない人なんていないと思います。



 誰かを傷付けてしまうような嘘は、もちろんつかない方が良いに決まっています。

 しかし、嘘も方便という言葉があるように、特に罪もない小さな嘘なら、みなさんも日常生活でよくついているのではないでしょうか?




 そんな、一見誰も傷付かないような小さな嘘をついたとき、実は私たちには大きな代償が伴っているとしたらどうでしょうか。




 今回はそのような、私たちが良かれと思ってついてしまっている「小さな嘘」についての研究を紹介したいと思います。








「小さな嘘」が私たちにもたらす影響


 取るに足らないような小さな嘘についての、ある研究があります。



 

 研究者たちは、1,500人以上の被験者を対象に8つの実験を行った。


 そのうちの1つでは、250組のペアが就職活動に関する会話を交わし、その後で自分自身と相手の感情の状態を評価した。



 半数の被験者には、相手を楽しませたり、自分の気分が良くなるような、捏造した話をしてもらった。


 残りの半数の被験者には、就職活動で本当に経験した話だけを話してもらった。



 結果は、話を捏造した(小さな嘘をついた)グループの被験者は、相手の感情を見分ける能力が大幅に低下していたことが分かった。

 



 8つの実験の中の他の実験では、一部の被験者にゲームでインチキをするチャンスを与えるものがあり、そのなかで、先に紹介した実験結果の根拠が明らかにされました。




 そこで分かったことは、「不誠実な行為をした人は、自分の人間性を、他者との関係の中でとらえることが少なくなり、この隔たりにより相手の感情を判断する能力が低下した。」ということです。



 もっとざっくり言えば、「人は不誠実な行為をするとき、自分にしか意識が向かなくなってしまい、結果として相手が何を考えているか分かりづらくなってしまう。」ということです。




 不誠実な行為というと、悪質でひどい行為のように感じるかもしれませんが、最初の実験のように、別に相手を傷付けるわけでもない取るに足らない嘘であっても、このような影響を受けてしまうのが恐ろしいところです。








1回の小さな嘘が、あなたを殺す


 1回のというのは誇張していますが、こうした小さな嘘でも、繰り返していくことでますます相手への共感能力が低下していくという、悪循環をもたらす可能性があるようです。



 共感能力が低下するから、どんどん不誠実な行為をすることに抵抗がなくなっていったり、それが相手にとって不誠実な行為だと気付かなくなったりするのかもしれません。





 私が働いていた職場でも、以前はカリスマ的な存在だったという先輩営業マンがいたのですが、私が一緒に働いていた頃にはすっかり窓際に追いやられていました。


 当時を知る人たちの話では、やはり周囲に対して不誠実な態度をとり続けていたらしく、その結果、どんどん人が離れていったそうです。


 それでもその人は私がいた頃でも、自分はデキる営業マンだという言動をとり続けていました。


 ご想像の通り、社内からはもちろん、営業の成績も全く伸びていませんでした。


 

 これはまさしく、不誠実な態度をとり続けた結果、他者への共感能力が低下し、さらに不誠実な態度をとってしまうという悪循環の好例だと思いました。







 研究者たちは、こう述べています。


 

「不誠実な行為を繰り返した者は、社会的にますます孤立して支援を失い、その後の非人間化(他者への配慮や思いやりを喪失すること)と不誠実な行為の合理化を行いやすくなる。」

 




 「嘘も方便」というのがまさしく「嘘」で、「嘘は緩やかな自殺」というのが正しいのかもしれません。



 それが相手を想っての行為であっても、嘘をつくときは慎重に判断した方が良さそうです。






【参考文献】

"The Interpersonal Costs of Dishonesty: How Dishonest Behavior Reduces Individuals' Ability to Read Others' Emotions," by Julia J. Lee et al. (Journal of Experimental Psychology: General, 2019)





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