いつもお世話になっております。孫平です。
それでは、学習の極意の続きです。
今回は、脳の「集中モード」と「拡散モード」についての話になります。
この2つのモードを上手く併用できれば、今までよりも学習効率がUPすることは間違いありません。
それではさっそく参りましょう。
「集中モード」と「拡散モード」
私たちが何かに取り組んでいるとき、脳の中では、「集中モード」と「拡散モード」という2つの状態を行ったり来たりしています。
集中モードとは文字通り、何か一つのことに集中している状態です。
例えば、数学の問題を解いている状態など。
一方拡散モードとは、脳がリラックスしている状態で、良い意味で思考があちこちに拡散している状態です。
例えば、シャワーを浴びているとき、散歩をしているとき、部屋の掃除をしているとき、音楽を聴いているときなどは拡散モードに入りやすくなります。
簡単に言えば、集中モードとは正反対で、「ほとんど頭を使わなくてもできること」をしているときになりやすい状態です。
そしてみなさんにもおそらく経験があるように、この拡散モードに入っているときは、今までどれだけ考えても出てこなかった解決策やアイデアが、パッと頭に浮かんでくることが往々にしてあるのです。
ポイントはどちらか一方に頼るのではなく、「集中モード」と「拡散モード」を意識的に使い分けることです。
例えばこんな感じでしょうか。
①数学の問題を解く(集中モード発動)
②行き詰まったらその問題からわざと離れて全く別のことをするか、別の数学の問題を解く(拡散モード発動)
③拡散モード中の脳内で、行き詰まった問題の解決策探しが行われる。(本人には自覚がない)
④拡散モードの時間を十分にとった後、再び行き詰まっていた問題に取り組む。(集中モード再発動)
⑤行き詰まっていた問題が、最初と違って解けることがある。(完全に解けなくても、部分的に進展することはよくある。)
このように勉強でも仕事でも、何か問題に行き詰まってしまったときは、意識的にその問題から離れて「拡散モード」を発動させましょう。
みなさんがリラックスしている間に、みなさんの脳は、先ほどの問題の解決策を導き出そうと目まぐるしく動いてくれます。
自宅で仕事をしていて行き詰まったら、一旦やめて食事をしたり、お風呂に入るなど、休憩は恐れずに積極的にとりましょう。
そして休憩するときは、完全にその仕事から離れましょう。完全に離れないと、拡散モードは発動されません。
休憩して拡散モードを発動させることは、難しい問題を解決するために必要不可欠です。
ぜひ、この「集中モード」と「拡散モード」という脳のはたらきを利用して、日々の仕事や勉強に役立ててみて下さい。
ハードスタート・テクニック
拡散モードの性質を利用したものに、「ハードスタート・テクニック」があります。
この方法は、テストや締め切りが迫っている仕事など、限られた時間で答えを出さなければいけない場合に効果的です。
例えばこんな感じです。
①テスト問題をざっと眺めて、特に難しそうな問題にチェックをつけておく。
②一番難しそうな問題から手を付ける。(おそらく行き詰まるだろうが、ここでは最初から解けることは期待していないためそれでいい。)
③行き詰まりを感じたら、一旦その問題から離れ、もっと簡単な問題を解いていく。
④簡単な問題をいくつか解き終わったあとに、再び最初の難しい問題に手を付ける。
一番難しい問題から始める方法なので、「ハードスタート・テクニック」というわけです。
難しい問題の解決策が分からなくても、その問題に触れることで、脳はさまざまな情報を収集しています。
簡単な問題を解いている裏で、脳の中では先ほどの難しい問題に「拡散モード」で対抗しています。
そのため、少し時間をあけて再びその問題に戻ると、最初よりも解けそうな気がする、解ける道筋が見えてきた、ということが起こるのです。
そして、そのように「拡散モード」を発動させ利用することは、簡単な問題を解くのと同時並行で、脳に難しい問題を解かせているので、テストのような制限時間内に答えを出さなければいけないときにうってつけの方法なのです。
よく、簡単な問題から解いて、難しい問題は余った時間でじっくり解こうとする人がいますが、それだと拡散モードの時間が足りず解答できなかったり、簡単な問題を解いているときに拡散モードが手持ち無沙汰になり、脳の力をフルに使えず時間も能力も持て余してしまうことになります。
ぜひ、テストのときはこの「ハードスタート・テクニック」を実践してみて下さい。
今回はここまでです。
それではまたお会いしましょう。
【参考文献】
バーバラ・オークレー、オラフ・シーヴェ『LEARN LIKE A PRO 学び方の学び方』2021年(アチーブメント出版)
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