いつもお世話になっております。孫平です。
以前、「時間で変わる広告効果」という記事を書きましたが、今回はそれの天気バージョンになります。
今回の研究内容も店頭での購買行動ではなく、スマホなどのモバイル端末での購買行動に焦点が当てられています。
スマホはほとんどの人が持っていて、ネットショッピングはごく一般的な購買手段になりましたから、商売をしている人はもちろん消費者である私たちにも、いろいろと参考になる点があるかと思います。
それではさっそく参りましょう。
晴天時と雨天時の購買行動の違い
まずは、テンプル大学と復旦大学の研究を見てみましょう。
この調査では、動画配信サービスの広告を、ランダムに1,000万人以上のモバイルユーザーに送信しました。
研究者たちは、ユーザーのいる地域特性を調整後に、天気がユーザーの購買行動に与える影響を特定しようと試みました。(地域によって天気の作用は異なるため、その影響を差し引く必要があるのです。)
ユーザーが広告が配信されたときにいた場所で記録された気象変数が、研究者たちに送られてマッピングされました。
その結果、次のようなことがわかりました。
・曇りを基準にした場合、晴天時は購入率が31%上昇し、雨天時では9%減少した。
・モバイル広告を受信してから購入までの時間は、晴天時は41.93%早かった。雨天時は49.87%遅かった。
・予防的なフレーミングの広告(この機会をお見逃しなく!みたいな内容の広告)は、そうではない広告に比べて、晴天時は効果が低いが、雨天時は効果が高かった。
これは、私たちが購買行動を起こすかどうかを決める気分が、天気の影響を受けることを意味しています。
そしてもう一つ驚くべきことが分かりました。
普通私たちは、よく晴れていて暖かいと、モバイル端末で購入せずに実店舗まで足を運ぶ人が多いのではないかと思うでしょう。
しかし、天気が良い方がモバイル端末経由での購入が増えたのです。
この行動に対して、研究者たちは次のようなコメントをしています。
太陽光が短期間の幸福に不可欠な栄養素を提供する。また、人間は概して日光に前向きな反応を示すことから、晴れた日はふだんよりリスクを許容する。気分が上向くと、結果としてモバイル端末での購入も増える。
また、ドイツの研究者チームが実施した別の調査からは、「湿度」が見込み客のモバイル端末での検索行動に影響を与えることが分かりました。
位置情報連動型クーポンを閲覧および選択中は、中程度の湿度が好まれます。ほとんどの人は、どんなに素晴らしいオファーが来ても、蒸し蒸しした日に買い物に出かけようとは思わないのです。
同じくらいの暑さでも、カラッと晴れている地域と蒸し暑い地域では、まったく逆の影響を及ぼすこともあるのです。
このような、天気が人々に与える影響に基づいて、Facebook、Google、Twitterは自社の広告戦略に気象データを取り入れ始めています。
その他にも、P&G、イギリスのコーヒーショップ・チェーンのコスタ、手芸用品チェーンのマイケルズ、コカ・コーラなども、気象データに基づいた販売戦略を行っています。
私たちができること
自社でホームページをもっていたり、自営業でSNSプロモーションをしている場合は、晴天時と雨天時、さらに言えばその日の湿度に合わせて適切な広告を出すと効果的でしょう。
晴天時は、顧客の購買率が上がりますので、その日は絶対に広告を出すべきです。
雨天時は、予防的なフレーミングのメッセージが効果を発揮するので、「この機会をお見逃しなく」とか「本日限定」「数量限定」「在庫残りわずか」とか、これを逃したら損するような気分にさせる広告を出すと良いでしょう。
消費者の視点では、晴れた日に魅力的な広告を見て、それを買いたい衝動に駆られたとしたら、それは日光があなたを一時的に惑わせているだけかもしれません。
本当に必要かどうか、もう一度よく考えてみましょう。それでも誘惑に負けそうなら、「晴れた日にネットショッピングはしない」とか「何か買いたいものがあったら一日待って、翌日もう一度検討してみる」といったマイルールを決めておくと良いでしょう。
雨の日に、予防的なフレーミングの広告、今買わないと損しちゃうかもと思わせる広告に触れたときも、同様のルールを設定しておくといいです。
どちらの立場であれ大切なことは、「天気は人の購買行動に影響を与える、ということを理解している」ことです。
今日からは、今までと違う意味で天気に気をつけて生活してみるといいかもしれませんね。
【参考文献】
アニンディヤ・ゴーシュ『Tap スマホで買ってしまう9つの理由』2018年(日経BP社)
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