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「仕事の幸福度を決めるものとは?」

更新日:2022年4月11日




 いつもお世話になっております。孫平です。


 一昔前に、デイル・ドーテンの『仕事は楽しいかね?』という本が流行りましたが、そういう類の本が売れるということは、多くの人にとって「仕事はつらく苦しいもの」なのかもしれません。


 

 ほぼ全ての人にとって切っても切り離せない「仕事」ですが、この「仕事」において何が幸福度ややりがいを決めているのか、今回はそのあたりの研究結果をまとめてみます。



 それではさっそく参りましょう。








仕事は生活していくための手段?


 「仕事」という語を聞いて、最初に思い浮かぶ言葉を尋ねた調査では、なかなか味気ない結果が出ています。



 

 アメリカの1,034人への調査の結果では、上位に連想された言葉は、「hard(きつい)」「job(仕事)」「money(お金)」「pay(給料)」「stress(ストレス)」などであった。

 

 この結果で出た言葉に共通しているのは、自分中心の視点であるという点です。


 つまり、「仕事」を何か有意義な活動というよりも、生活していくための手段としてとらえている人が多いということを示したのです。


 

 そして残念なことに、他者への具体的な貢献についての言葉が1つもなかったのです。






 かなりショッキングですが、「会社で働くと健康や幸福度に悪い影響が生じる」という研究結果さえあります。


 

・人々が日常的に関わっている様々な活動において、どれくらい幸福度を感じているかを調べた研究によれば、39の活動のうち、働いているときよりも幸福度が低いと評価されたのはたった1つ、「病気になって寝ているとき」だけだった。



・ある研究によると、劣悪な環境での仕事は、人の健康にとって失業より有害であることが分かっている。

 

 トム・ラスはこう述べています。


「仕事は本来、働く人を幸せにすべきものだ。にもかかわらず、現実には人をひどく苦しめている。」








仕事についての考えをアップデートする


 多くの人が、「仕事」=「生活のための手段」ととらえていながらも、実際に心の底で望んでいることは、どうやら違うようです。



 

・2017年にトム・ラスが行った、アメリカの1,099人を対象にした調査では、「自分が人や社会のためにした貢献」と「自分が稼いだ富」のどちらで他者の記憶に残りたいかを尋ねた。

結果は、回答者の約90%にあたる960人が、貢献で記憶されるほうがよいと答えた。



・多くの研究結果が、達成感と幸福感を得るための最大の要因は、「日々の努力が他者の生活にどれだけ貢献しているのかを実感すること」だと示している。



・「向社会性(他者を志向すること)」に関する数百件もの研究を調査した結果、有意義な人生の特徴とは、「他者と深くつながり、自分を超える大きな何かに貢献していること」だと定義できることが分かった。

 

 つまり、ほとんどの人は誰かの役に立ちたいと思っているのです。




 

 

 

 それならば、皆さんもおそらく持っているであろう「誰かの役に立ちたい欲求」を、自分の仕事を通じて「誰かの役に立てること」とリンクできないでしょうか?


 なぜなら、このように考えることには、とても大きな意味があるからです。



 

 約9年間にわたって4,660人を追跡した長期的研究によれば、社会人1年目の時点で、収入を得ること以上に大きな目的意識を仕事に持っていた人は、時間が経つにつれて収入と資産が増えていた。

 

 つまり、「仕事を通じて誰かにもたらしている価値」に意識を向けると、そうでない人よりも収入が増える可能性が高くなるのです。


 結果として誰かに貢献できれば、幸福度も高くなるのは先にも述べた通りです。








「最高の仕事」は自らつくりだせる


 自分にとってよりよい仕事をして、充実した人生を送りたいとき、「転職」を選択肢に入れる人は多いでしょう。


 それが上手くいくことももちろんあるでしょうが、多くの場合は、今の仕事でよりよく働ける方法は何かを考えてみることが最善策になります。




 多くの研究から、最高の仕事とは「自らの手で意図的につくりだすものであり、誰かから与えられるものでも、偶然に見つかるものでもない」ということが分かっています。






 エイミー・レズネスキー、ジャスティン・バーグ、ジェーン・ダットンらの研究チームは、「今の仕事を望ましい仕事に変えることは可能である」という結論を出しています。


 この研究チームは、「現在の仕事を有意義で楽しいものにすることに成功した人」を10年以上かけて徹底的に研究してきました。



 そこでは、望ましい仕事環境をつくるためには、3つの領域で変化を起こす必要があると述べています。



 

①業務内容を変化させる

仕事量を増減させたり、業務の範囲を変えたり、仕事のやり方を変える。



②人間関係を変化させる

付き合う人を変えたり、付き合う頻度や時間を増減させたり、付き合い方を変える。



③認識を変化させる

自分の仕事の目的について再度考えてみる。

ex.なぜこの仕事が、自分・顧客・社会にとって重要なのか?

 

 この3つの領域での変化は、「私たちには、働き方や貢献の方法を自分で決める権利がある」という感覚をもたらしてくれます。


 

 業界・業種を問わず、「自分の仕事は自分の力で良い方向に変えられる」と考えている従業員は、仕事に積極的に取り組み、成果を上げ、苦境に見舞われても早く立ち直れる、という特徴を持っていることも分かっています。







 自分にとってより望ましい仕事をするために、現在の仕事を今すぐに辞める必要はありません。


 まずは、今の仕事が誰かの役に立っていることをはっきり認識できるようにして下さい。


 

 そして、自分がしている仕事と、その仕事によって恩恵を受けている人を結びつけてみて下さい。




 

 

 トム・ラスはこう述べます。


「日々働くことが誰かの人生をよりよいものにしていると実感できると、仕事の成果が上がり、楽しさや満足感も高まる。そして、そのことを示す研究結果は数え切れないほどある。」






【参考文献】

トム・ラス『「向いてる仕事」を見つけよう』2021年(ダイヤモンド社)




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