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「ノンバーバル・シグナルの王様、足と脚」

更新日:2022年4月11日




 いつもお世話になっております。孫平です。


 前回と前々回は、腕と胴体のノンバーバル・シグナルについてみてきました。ノンバーバル・シグナルとは、非言語のメッセージのことです。



 

 私たちは体全体から、このノンバーバル・シグナルを発しているわけですが、体の各部位の中で最もそのシグナルの信憑性が高い部分が、足と脚と言われています。



 それはなぜかと言うと、私たちの体は上にいけばいくほど、自分の感情を偽装し、体の動きをコントロールできるように訓練されているからです。


 顔の表情はその最たるもので、嫌いな人の前でも笑顔をつくることができてしまいます。それは、子どものころからそういうふうに訓練されて(あるいは自らして)きたからです。




 人間は社会的な生き物なので、他人から一番よく見られる部分である顔が、一番上手くコントロールできるというわけです。


 ところが、顔から一番遠い部分である「足と脚」のノンバーバル・シグナルをコントロールできる人はそうそういません。他人から足の動きを見られるなんてことはなく、その必要が日常生活ではないからです。




 私たちはよく相手の表情から、その人の気持ちを察しようと試みますが、先ほども述べた通り、顔は人間が一番よくコントロールできる部位であるため、そこからその人の本心を見抜くのは困難です。




 私たちが相手の本心を知りたいと思うのなら、絶対に見落としてはならない部位、それが本心がそのまま動きとして露呈する「足と脚」なのです。








喜びを隠せない足


 足は正直です。どれだけクールな表情を装っていたとしても、小刻みに動いたり跳ねたりしている足と脚は、その人が喜んでいることを証明しています。



 例えば、ディズニーランドや遊園地に向かっているときの子どもの足や脚の動きを想像してみて下さい。




 どうですか、とっても嬉しそうな動きですよね。




 このように、人は何かに胸を躍らせたり、喜びや嬉しさを感じたりすると、まるで重力に逆らうようにリズミカルに跳ねるように歩くのです。



 また出てきましたね、「重力」



 おさらいですが、重力に自然に逆らう動きというのは、脳の大脳辺縁系の反応、つまりその人の本心が表れたものです。


 この喜ぶ足や脚の動きを、そういう気分でないのにわざとやっても、どこかぎこちない動きになり上手くできません。




 余談ですが、重力に逆らう足と脚の動きは、鬱病の人にはほとんど見られないそうです。








足の向きに注意せよ


 相手の気持ちを見抜く方法などあるのでしょうか。



 答えは、「ある」です。




 その方法は、相手の足の向きを見ることです。



 

 私たちは、好意を抱いているものや感じのいいものには足を向け、嫌いなものや不愉快なものからは足をそらす傾向があります。


 

 なぜそのように反応するかというと、私たちの祖先の時代では、周囲の脅威(肉食獣などの外敵など)に即座に反応し、意識せずとも動き出す必要がありました。

 そのため、自分にとって危険な存在からはすぐに逃げることができるよう、その存在とは反対の方向に足を向けろという遺伝子が、私たちには組み込まれているのです。

 逆に、足をその存在の方向に向けるということは、自分にとって危険はなく心を許している状態を表すのです。





 もし仕事でもプライベートでも誰かと話しているときに、相手の片足または両足が自分とは違う方向に向いていたら、相手は「早く話を終わらせたい」「この場から立ち去りたい」と思っている可能性が高いと考えられます。

 その動きを確認したら、早々に話を切り上げて出直した方がよいかもしれません。



 同じように、「この場から立ち去りたい」気持ちを表す動きとして、座っている人が膝に手を置いて膝を握るものがあります。なぜなら、普通膝に手を置く動作の後には、上体を前に倒して立ち上がるという動作が続くからです。

 相手が膝に手を置くしぐさを始めたら、そろそろ話を切り上げた方がいいでしょう。



 逆に、相手の足が自分の方向を向いていたら、相手は自分に好意や興味を持っている可能性が高いと考えられます。

 その動きを確認したら、こちらの話や要求を素直に聞いてくれる可能性が高いので、引き続き話をしてみるとよいでしょう。








縄張りを主張する足


 人は相手に対して敵対心を感じると、両脚を開いて立つ傾向があります。


 脚を開いて立つ姿勢はバランスがとれている姿勢であり、いつでも敵と交戦する準備が整っている状態とも言えます。


 それだけでなく、できるだけ体を大きく見せて縄張りを主張しようとする行動でもあります。



 相手が揃えていた脚を開き始めたら、だんだんと機嫌が悪くなっている兆候なので、トラブルを警戒した方がよいでしょう。






 ここからは余談ですが、エドワード・ホールは「縄張り意識」について研究し、そこから「近接学」というものを確立しました。(1969年)


 彼の研究から、社会経済学的または階層的に優位な立場にいる人ほど、広い縄張りを求めることが明らかになりました。


 また、日常の活動でより広い空間(縄張り)を占める傾向がある人ほど、落ち着きがあり、自信をもち、より高い地位にいる傾向があることも発見しました。



 私たちの経験からも、確かに偉い人は広い空間を占有しているイメージがありますよね。








快適さを表す足と脚


 相手が、自分または他の誰かと一緒にいて、心地良く感じているかどうかを見抜く方法があります。



 それはその人が、片足をもう一方の足の前方にもってきて脚を交差させているかどうか、ということです。


 もし、そのような足の動きをしていたら、相手はその人と一緒にいることを快適に感じている証拠になります。




 なぜそう言えるのかというと、片足をもう一方の足の前にもってきて脚を交差させている姿勢は、非常にアンバランスな状態です。

 安全の面から考えると、この状態で何か危険が迫ってきたら、即座に動き出すことはできません。

 そのため、本当に快適さを感じているときでないと、このような足の動きは見られないのです。








ストレスを物語る


 貧乏ゆすりをする人がたまにいます。貧乏ゆすりそれ自体は、何かストレスを感じていることの表れであるとは言い切れません。


 しかし、貧乏ゆすりの揺れが大きくなり、次第に蹴るような動作に変化してきたときは、その人は不愉快な感情と戦っている可能性が高いと言われています。

 




 

 足の動きが止まる状態も、注目すべき動作です。

 

 いつも足や脚を落ち着かなく揺らしたり弾ませたりしている人が、突然その動きを止めた場合は、ストレスを感じたり、何かに怯えている可能性があります。





 片足のつま先を、もう一方の足のアキレス腱のあたりに巻き付けて固定する動作も、その人が不安や心配、脅威を感じているサインになります。

 それと同じような感情の表れとして、足を椅子の脚にからめて固定する動作もあります。


 振り返ってみると、私も仕事が立て込んでるときは、よく自分の足をもう一方の足の足首のあたりに巻き付けて固定していることがあります。


 ちなみにウソをついている人は、固まったように足を動かさなくなったり、足を何かで固定する傾向があるそうです。




 

 両足を椅子の下に引っ込める動作も、何かストレスを感じたときに表れるものです。

 これは、相手から遠ざかろうとする反応で、体の見える部分をできるだけ小さくして、自分に注意が向かないようにしているのです。





 

 これらは全て、その人が何かしらのストレスを感じていることの表れなのですが、重要なのはそのような足や脚の動きに気付いた後、「なぜその人はストレスを感じているのか?」「何がその人にストレスを感じさせているのか?」ということに思いを巡らせることです。


 そのように感じ、行動することで初めて、ノンバーバル・シグナルを見抜く方法が役に立つのです。


 ただ「あぁ、あの人は今ストレスを感じているんだなぁ」ということが分かったところで、それだけではほとんど意味がないのです。


 是非みなさんには、目に見える表面的なことだけにとどまらず、「そのような動きが表れる原因はなんなのか?」というところまで思いを巡らせてほしいと思います。








簡単な実践方法


 誰かと会うときに相手の本心を見抜くための簡単な方法を、元FBI捜査官のジョー・ナヴァロ氏が提示してくれています。



 

①まず身を乗り出し、挨拶をする。(初対面の人であれば、名刺交換や握手などをする。)



②相手の目をしっかり見つめ、その後で一歩下がって様子を見る。



※この後、3種類の反応のうちのどれかが起こる。



③-1、相手がその場にとどまる。(その人は今の距離感をちょうど良く感じていると考えられる。)



③-2、相手が一歩下がるか、少し身を引く。(自分のことをまだ警戒しているか、早く他の場所に行きたがっていると考えられる。)



③-3、相手が自分の方に一歩近づいてくる。(その人は自分といることを心地良く感じていたり、好意をもっていると考えられる。)

 

 この方法を実践すれば、高確率で相手の自分に対する本心を見抜くことができるため、その後に適切な対応が可能になることは言うまでもありません。


 是非一度試してみて下さい。







【参考文献】

ジョー・ナヴァロ、マーヴィン・カーリンズ『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』2012年(河出書房新社)




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